オハイオでの冠婚葬祭

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駐在していた3年間の間に幸いにも?結婚式と葬式に参列する機会を得た。
これはそれらの体験記である。

安上がりな結婚式

式の当事者はこちらで知り合った米人の友人家族の一人の結婚式であり
新郎新婦とも大学生でもう3年以上付き合っていたが新婦の卒業と就職を
機会に一緒になることにしたようだ。
新郎はアルバイトこそしているが安定した収入は無いし新婦の収入もまだ
小学校の教職についたばかりでそんなに多くは無いはずである。
引越しの手伝いで彼らが新生活を送る家を見たが建築後80年は経た古い借家で
質素なものであった。まあそれでも日本の2DKの倍はあるが。
式の招待状は新婦の父親から来た。お祝いの贈り物は近くの専門店で金額に応じて
アレンジしたセットがいろいろあったがそれでは日本人として個性が無いので
象印の保温ジャーとした。なにしろアメリカ製の保温ジャーといったらやけどを
しそうな金属むき出しで内部のテフロンコーティングもしてないようなお粗末なもの
なのだ。一週間も湯を入れっぱなしにしたらアルミの白い錆で湯がにごってきた。

式は新郎の実家の所属する教会で夕刻から始まった。
妻と私は参列者として何を着ていくか迷ったが無難なスーツとした。
でも他の人たちは全く普段の服装でジーンズの人もいた。
教会での式は映画でおなじみのごとく厳粛な雰囲気だったがみんなが場慣れしているのか
緊張感は無かった。15分ほどで式は終わり地下の広間でパーティとなった。
食事というよりウェディングケーキを中心にクッキーとソフトドリンクなど軽い食べ物を
置いてあるだけの質素なパーティだが皆さん賑やかに会話を楽しんでいた。
もちろんアルコールとタバコは誰もやらない。
1時間ほどで新婦のサムシングブルーを賑やかなおばさんたちが奪い合って宴会は終わった。
ウェディングケーキは使い回しのイミテーションでこれなら宴会費用は安いはずだ。
教会の玄関からハネムーンに出発する新郎新婦を皆で見送ったがこれにはシャボン玉の
発生する小ビンを各自が持ってシャボン玉の吹雪で送った。以前は粟粒などを使ったそうだが
これなら掃除はいらない。
日本の多くの結婚式に出てきた経験から見ると引き出物も豪華な料理もお色直しも
うわべだけの主賓の挨拶もないがそもそも結婚式とはこんなので良いではないか。
業界の商魂にいつのまにか毒され本質を失ったのが昨今の日本の実態ではないだろうか。
もっとも安上がりだからといって離婚再婚再々婚を繰り返すのも困るが。

これがアメリカのお葬式

52歳になる米人の同僚が心臓発作で急死したので葬式に参列した。
日本でも葬式は宗派により地方により大きくやり方が異なる。
初めてのことでそもそも香典に当たるものはあるのか、服装は、等など戸惑った。
友人たちに聞いたところ香典に相当するお見舞金は要らないということだった。
服装も特に注意は要らないそうだ。
さて参列する仲間達の車に同乗し会場である葬祭場に向かった。
彼らの服装はジーンズこそいないが白いスーツや全くの普段着だった。
会場で記帳し部屋に入ってあっと驚いた。なんと周囲を花に覆われた遺体が棺の
ふたを開けられまだ誰もいない部屋に独り横たわっていた。
やがて入ってきた人たちが遺体の前に近づきじっと見てきれいな顔だと言いながら
ポケットに手を入れたままのごとく去っていく。
さすが私はつい両手を合わせてしまったがこれは文化宗教の違いだろう。
参列者の服装はカラフルでブルーやイエローと様々だった。
そこで受け取ったカードには無くなった人の経歴等が書かれていた。
式典はしめやかな音楽の流れる中、親しかった友人の哀悼の挨拶と牧師の祈りで
20分ほどで終わった。
遺族である奥さんは悲しそうな表情だったがそれでも時には参列者に笑顔を見せる
こともあった。
式のあと墓地まで移動するそうでそれぞれの車に葬儀社が用意した小旗を付け
一列縦走でゆっくりと道路を進む。これが見事なもので他の車は一切割り込みはせず
赤信号でも関係なく列を切らずに進む。州の交通規則で葬祭の車列は他の車に優先と
決められているのだ。
広々した墓地に着いた。普通は土葬だからあらかじめ掘られた穴の横に棺をおろし
もう一度牧師の祈りがあった。それですべてが終わり参列者全員がその場で解散した。
あとは身内だけで教会で集まるそうだ。
日本であるような毎週のお参りや年忌も無い。実に簡単だ。でも命日には身内で墓地の
整備に行くそうだ。
しばらくして職場に奥さんから参列御礼のカードが届いていた。
それにしても日本の香典返しなんて遺族を悩ます制度は誰が始めたんだろう。

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