鶏足山 秘められた参詣道

亀山の北にそびえる鶏足山(野登山)は地域の霊山である。鶏足山(野登山)
山頂にある古刹、野登寺を含めて人々は野登さんと親しみを込めて呼ぶ。
安坂山坂本集落の北からの表参道は車道が利用できる今でも地元の人により整備され時代を超え現在も利用されている。千年以上の歴史を持つ野登寺の参詣道は一本ではなかっただろう。東に位置する庄内の村からもあったはずで国土地理院の2万5千図にも破線で描かれた尾根ルートがあり現在は鈴鹿市と亀山市の市境となっている。ここを歩くと部分的に道形は残っており途中には往時をしのばせる、みそぎに使われただろう小滝や壊れた石仏(下の写真)も見られるが険路でありヤブコギルートでとても一般には利用はできない。壊れた石仏(市境の尾根道にて)

2004年の秋、野登山に石灰岩採掘の権利(鉱業権)を設定しようと岐阜の業者が企てていることが公になり地域や自然保護団体を挙げての阻止運動が起こり結局この企ては業者が断念し事なきを得たことがあった。この過程で私は業者の意図するところが本当に石灰岩か単に権利を得るための鉱業権の乱用か調べるため野登山の谷や尾根を歩き回った。
東にのびる尾根に入ったときはっきりとした、幅広い道形があった。地図にある破線路ではない。近年登山者や杣人等が歩いた形跡も無い。しかしその道形は何百年間、人々が歩いたことをうかがわせる雰囲気が漂っていた。これは炭焼き人の道ではない、林業の道でもない、明らかに参詣道のひとつだろう。いつか詳しく調査してみようと決めた。

現在このルートの入り口はわかりにくい。庄内の霊園(峰ヶ城メモリアルパーク)からつづく道を途中で分かれ沢をつめると植林された尾根にぶつかる。注意ぶかく見るとつづら折で上に登って行く古い道形に気付くだろう。植林帯を離れ驚くほど楽に上に上にと登れ、やがて緩やかな尾根に出る。
誰も利用していないようだが道形は広くはっきりしている。ところどころ下界の展望が開き、暖かい日差しにあふれた気持ちのいい道である。左に分岐路があり緩やかに降りる道は地図にある破線路のみそぎ場付近に続く。
あるいはかってはこのルートこそが一般に利用された参詣道だったのかもしれない。
やや急な尾根を一気に上ると笹枯れの一帯にぶつかる。もう巨大な野登山塊の東の端に到達している。あっけないくらい容易に小岐須につながる一の谷の登山ルートに合流した。

秘められたこのルートはあまり多くの人に知られたくは無いが坂本集落を基点にすると東海自然歩道を約30分歩行で霊園に着く。そこからこのルートを登り下降路に表参道を使うと4〜5時間楽しめる野登山の周回コースとなる。(このルートを赤線で示す)
坂本を出発、東海自然歩道を北上
30分ほどで霊園(峰ヶ城メモリアルパーク)に着く。
この橋を渡り左に入る。
広い道を行くと沢を分ける。
前方に小屋が見える。
ここで広い道を左に離れ沢に入る。
荒れた谷である。
沢が二股に分かれるところで中央の尾根に登る。
尾根を前進すると左方向に登る道形が見える。
ここまでくれば後は楽である。
ジグザグの登りやすいルートで
上部では杉も無くなり明るい雰囲気である。
不思議なほど誰も歩いている形跡が無い。
山歩き関係者も歩いていないようでテープの類は一切無い。
緩やかな尾根道を進む
道形ははっきりしているが
林業の標識等も一切無い。
明るい尾根に出る。
この部分で左に降る道形があるが
右にそのまま登る。
幅の広い道なのに地形図に出ていないところから
早い時期、明治以前に廃道となったのかもしれない。じつに興味深いルートだ。
やや急な登りの後、倒木にぶつかる。
左に巻くと視界が開けもう少しである。
笹枯れ地帯を左にトラバース気味に登る。
あっけなく一般ルートに合流した。
後は緩やかな登りを野登山の頂上に向かう。

やがて国見の広場に出る。

以上 仙の石  2007年2月10日調査