オハイオの教会体験記
オハイオに住んでまもなく1年になろうとする頃友人たちが毎週通っている教会に
継続して通うことにした。
もちろん日本ではキリスト教とは縁がなく教会など行ったことはなかった。
友人たちは敬虔なクリスチャンであったがけっして信仰を押し付けることはなく
私の方からあなたたちの教会に行って見たいが問題ないかと尋ねたほどだ。
初めての礼拝に参加するので一応スーツを着て行ったが多くの人はジーンズのままで
家族連れが多かった。教会の規模はその街では大きいほうで200人は来ていた。
牧師はこの教会に日本人が来たのは初めてでありこれから更に多くの日本人が来てくれる
ことを希望すると紹介の挨拶をした。
初めての礼拝はカルチャーショックだった。多くの人が祈りのリクエストで自分の
家族の病気やトラブルをあからさまに場合により涙ながらに大勢の前で話すのだ。
プライバシーを重んじる国民のイメージが崩れ去った。
牧師の説教はほとんど理解できなかったが賛美歌は気に入った。毎回独唱があり
これを聴くだけでも通う価値があった。実際皆さん歌がうまい。おびただしい数の
賛美歌があり現在も新たに誕生し続けているのだ。
礼拝のあとはサンデークラスと称して10人程度の世代別や性別のグループに分かれて
1時間ほど聖書の勉強会だ。まあ時間の半分は雑談であった。それに毎回誰かが恐ろしく
甘いドーナツを持ち込んでコーヒー等を飲みながらである。
聞き取りの練習にはなったがひどいオハイオ南部訛りには閉口した。
まあしかし日曜は暇でもあったのでいつも教会に出席することにした。
多くの人と同じようにノーネクタイ、ジーンズのままである。
ほとんどの人が家族皆で来ていて幼児にはベビーシッター付きの保育室が用意されていた。
月に一度は教会での親睦夕食会があった。有志が料理の鍋や皿を持ち込み会食を楽しむのだ。
メニューはハムやステーキ、チキン、豆の煮込み、マッシュドポテト、サンドイッチそれに
ケーキが多かった。
私もたいてい何らかの日本料理を作って持参した。カシワご飯やミニトンカツ、玉ねぎの
天ぷら、すき焼き等、一度だけイカの醤油煮込みも持ち込んだ。
お世辞かもしれないが何人かはわざわざこの料理はエキセレントだって誉めてくれたりして
評判はよくいつも容器は空になった。
礼拝は毎日曜の午前に2回と夕刻に一回の3回であった。どうも早起きの年配者向けに
8時半から早朝礼拝がありサンデークラスをはさんで子供や若い人向けに午前11時からの礼拝があるようだ。
そして夕刻7時からはコーラスグループの出演等家族皆で楽しめる企画の礼拝にしてあるようだ。
多くの人は午前と夕刻礼拝の両方に出席する。献金は盆が回ってきて入れたい人だけ
1ドルや5ドル程度裸でそのまま入れる。誰も人の入れる金額など気にはしない。
時々ある洗礼式はバプテスト教会だから本格的な全身浸漬だ。演壇の最上階にガラスの水槽
があり白い衣装に着替えた洗礼希望者が風呂のように入り牧師の祈りの後、頭まで一瞬漬か
る。観衆はアーメンと声をあげて終了だ。
友人達と一緒に親睦のため他の教会も何ヶ所か訪ねた。若者中心の教会ではゴスペルの騒が
しさに閉口した。やはり伝統的で静かな教会が性にあった。
時々聖餐式があった。無知なゆえどうして良いかわからない。回ってきた盆からパンを意味
するクラッカー状の物体と小さなカップのブドウジュースを取り皆と同じように口に入れた。
後で日本のネットで調べると普通は未洗礼者は受け取らないそうだ。しまったと思ったが
後の祭りだった。でもバプテスト教会では洗礼は本人の意思が決まってからで幼児洗礼はし
ない。つまり未洗礼者が多数来ているはずだが皆聖体を受けており厳密なことは言わないよ
うだ。再度友人たちに確認したら別にかまわないと言ったのでそれ以降も皆に倣って聖体を
受けつづけた。一度聖餐式の手伝いでたくさんのミニコップにブドウジュースを分配したこともあった。
理科の実験よろしく大きなスポイトで次々注入してゆく。牧師が清めるまではただのジュースなのだ。
教会を軸とした地域の相互交流はとにかく生活の一部となっていた。毎週どこかでパーティが
あって参加者は簡単な料理を持っていくかフライドチキンやケーキを買って持っていく。
準備から後片付けまで皆でやるから負担にならないようだ。
日本の宴会ではあたりまえの酒類やタバコは誰もやらないし酒抜きでも皆賑やかに楽しむ。
とにかくパーティ好きの国民性だから年中何らかの理由をつけてパーティをやっている。
春はイースターでパーティ、初夏は独立記念日でパーティ、夏はアウトドアでパーティ、
秋はハロウィンや感謝祭でそして冬はクリスマス、何もなければそれなりにパーティを開いていた。
教会で知り合った友人達とはその後もEMAILで交流が続いている。
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