オハイオの四季と人々の暮らし
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オハイオの人々はいつもおおらかに
自然に逆らわず百年一日の如く暮らしていた。
かっての私たちの暮らしがそうであったように。
早春の頃
厳しく長い冬も終わりを告げるのは3月頃だろうか。
風がある日突然のように南から吹き一気に気温が10度以上も上がる。
日差しも暖かく感じられその日のうちに芝生のあちらこちらからタンポポが
その黄色い花を一斉に開く。
タンポポは美しく整備された芝生を侵食しどんどん増えるのでここでは嫌われ者だ。
でも私には春の訪れの使者としてひときわ可憐に思える。
やがて家々の庭にレンギョウがその黄色い花を一斉に咲かす。
春の訪れのシンボルカラーはやはり黄色だ。
プシーウィローと呼ばれるネコヤナギもその花芽をふくらます。
森はまだガランとして冬のままだがドッグウッドが白い花をところどころで咲かす。
ちょうど日本の山で早春に咲くコブシと似ている。
日本ではハナミズキと名づけられた花木だがここの森ではいたる所に見られる。
タンポポに埋もれて春の訪れを楽しむ。 |
春
道路沿いにはレッドバドと呼ばれる赤く小さい花が一面に続く。
この花は新緑前の森林を飾る代表である。
4月の末はイースターだ。教会に集う人々は聖歌グループの公演等で復活祭を祝う。
厳しい冬を乗り越えたこの時期、人々の表情もどこかうきうきしている。
親戚や友人の家族を呼び寄せバスケットに入った卵や果物や菓子をプレゼントし
イースターのパーティがあちらこちらで始まる。
思いっきりおしゃべりし、おなかいっぱい食べた後は広々した庭に出て卵探しゲームだ。
おもちゃの入ったカラフルなプラスチックの卵を隠しておき子供たちが一斉に探す。
大人たちも1ドル出しあい仲間入りする。最初に見つけた人は一挙に参加人数分の
賞金が得られる。勝てばちょっとした臨時収入だ。
街では恒例行事のインディアンの春祭りが開かれる。伝統の衣装を着け唄い踊り民芸品を
並べ春の訪れを祝う。
森は新緑の季節を迎える。常緑樹が少ないここではオークやメープル等ほとんどの
落葉樹林が一斉に若葉を出し始める。
その微妙な色合いの違いを眺めていると時を忘れるほどである。
この時期はガーデニングの季節でもある。ショッピングセンターには膨大な量の植木や花の苗が
売り出され肥料や培養土が山積みされる。多くの家では隣人と競争するように庭を飾り立てる。
初夏
オハイオには梅雨は無い。6月はからりとして一年中でもっとも快適な季節だ。
子供たちは月の半ばには夏休みが始まる。大人もバケーションを計画する。
ヤードセールの季節でもある。およそ使い物にならないようなものまで庭にいっぱいに
店開きし通りがかりの客とひとときを楽しむ。
日没は遅く夜9時を過ぎてからだ。仕事を終わってからも野外で散歩や釣りを楽しめる。
ベランダにガスオーブンを持ち出しバーベキューを楽しむ家庭も多い。
夜になると何処からか蛍がいっぱいやってきて暗闇を照らす。
夏
湿気は無いが夏は暑い。空気が澄んでいるので日射が強くサングラスを着ける人が多い。
停めておいた車のハンドルなど火傷をするほど熱くなっている。
芝刈りの季節でもある。毎週毎日のように広い庭に芝刈り機を走らせる。
熱いので半裸体で乗り回している人もいる。
森は深緑一色となり青く澄んだ空から陽光をいっぱいに受け風になびき照り輝く。
7月の独立記念日には昼間はパーティそして夜は花火を楽しむ。
アウトドアーの季節でもあり人々は森林公園に繰り出し湖水ではモータボートで遊ぶ。
子供たちは暗くなるまで水着で戸外を走り回る。
いつのまにか畑のトウモロコシは人の背をはるかに越えるまで成長し視界をさえぎる。
果てしないほど広々した牧場の牛たちは一日中草を喰む。
夏の終わる頃は祭りの季節でもある。畑の収穫物や自慢の骨董品を広場に持ち込んで
バザールを楽しむ。
初秋
8月が終わる頃、学校の新学期が始まる。
トウモロコシは穂を出し実をつける。野生の鹿達がそれを狙って森からやって来る。
道路に飛び出す鹿も多く衝突する事故もある。
畑のカボチャ(パンプキン)は品種によっては子供より大きくなり農家では自慢の
巨大なパンプキンを軒先に飾る。
秋
朝晩めっきりと冷え込むようになると秋は紅葉と共にやってくる。
抜けるような青い空と森全体を染める紅葉の林。
とりわけメープルの樹林は赤から黄色に至る微妙な色合いに目をうばわれる。
森の中、降り注ぐ落ち葉に打たれながら歩くと大自然に溶け込んだ感覚にさえなる。
10月の終わりには子供たちが楽しみにしているハロウィンがある。
魔法使いやお姫様や骸骨など思い思いの仮装をし家々を巡りキャンディをもらう。
母親までが一緒に仮装をして楽しむことも多い。
どこまでも青い空とメープルの紅葉。
そしてアーミッシュの馬車。 |
晩秋
畑では大型コンバインで一斉に牧草とトウモロコシの刈り取りが始まる。
牧草は巨大なロールにしトウモロコシは茎ごと刈り取りサイロに保管される。
再び大平原に戻った畑に立ち地平線にゆっくりと沈んでいく夕日を眺めていると
大自然の創造者を思う。
11月の終わる頃には感謝祭だ。親元を離れ遠くに暮らす家族たちが何千マイルを走り
来て一同に集まる。そしてパンプキンパイとターキー料理を食べ久しぶりの再会を喜ぶ。
初冬
冬の訪れは早い。北風が冷気を呼んでくる。霜が降りる頃には夜間の暖房が欠かせない。
森では厚く積もった落ち葉が地表を覆い長い冬の始まりとなる。
12月になるのを待ち構えるように人々はクリスマスの準備にとりかかる。
家々の庭にイルミネーションを飾りたて大人も子供もプレゼントの品々を選ぶのに奮闘する。
部屋にクリスマスツリーを飾りその下にプレゼントの箱を積み重ねる。
そしてクリスマスの日、おなかいっぱいにご馳走を食べた後、みんな集まったところで
一斉に箱を開く。飛び交う箱の数々と歓声、そして破られた包装紙の山。
これこそ寒い冬の最大の楽しみである。
その年最後の晩、パーティをしながら新年を待つ。カウントダウンが始まると台所から
フライパン等をありったけ持ち出し新年の瞬間戸外で打ち鳴らして祝う。
電気代が家計を狂わすかも?
12月になるとこんな照明を競う家々が多い。 |
厳冬
しばしば外は零下10度以下となり防寒着を身に着けても5分と歩けない。
それでも子供たちは朝暗いうちからスクールバスで学校に通う。
猛烈な寒波が来れば更に寒くなり零下20度にもなる。人々は自然に逆らわず
暖かい暖炉を前にゆとりの日々を過ごす。趣味で人形や木工品等の製作に励む人も多い。
さらさらした雪は降っても風で飛ばされ多くは積もらない。
それでも南風が吹けば一気に20度近く気温が上がるのでそのときとばかり戸外を散歩する。
森は静かに眠っているが崖には巨大なツララが列をなす。
降った雨は地表近くで凍りつく。枯れ枝の樹氷が朝日を浴び宝石をちりばめた如く輝く。
春近し
雨が少ない大陸でも冬の終わりには雷を伴った豪雨が襲う。
小川は溢れ出しゆっくりと大河の水位を上げる。畑を一面の池と成した洪水は何日も
何週間もかけて下流に移っていく。洪水が去った跡に残されたおびただしいミミズ達。
もう春も近いのだ。
終り
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