我が心の山、仙ヶ岳 TOP PAGEに戻る
仙ヶ岳は南鈴鹿の秀峰である。その特徴ある双耳峰は遥か北鈴鹿からでも確認できる。
古くから信仰の山とされ中腹にある不動尊には今なお参詣する人が絶たない。
南に延々と続くなだらかな御所平は豊かな樹林をはぐくみ名水と言われる安楽川の
水源となる。東に切り立つ急峻な峰は人を寄せ付けず巨大な滝をいくつも落とす。
多くの山が林道の敷設で切り刻まれている昨今でもこの山は自然のままの姿を保った
貴重な存在である。山域には数十年前まで利用されてきた炭焼きの窯跡や杣人の
踏み跡がいたるところに見られるが今は静かに樹林に埋もれ自然に帰りつつある。
現在この山の南では第二名神高速道路の工事が行われているが幸い仙ヶ岳はコース
から避けられた。
いたる所に残る炭焼き窯の跡 |
行程の長い山だから急ぎの登山は似合わない。充分な時間と装備で歩きたい。
石水渓入り口から営林林道に入ると石谷川に沿って緩やかな登りとなる。
左手には鬼が牙の絶壁があたかも山水画のような景観を見せてくれる。
30分も歩けば林道も終わり樹林の中に廃屋となった営林小屋を見るだろう。
ここからコースはふたてに分かれ右の不動明王へと登る。
この辺りはかって炭焼きが盛んに行われていた。今はその跡も静かに樹林に埋もれている。
一気に荒れた急坂を登りきると鞍部に出てすぐ右には不動明王の石像がある。
登山の安全を祈りすぐ上の頂には絶景と言える展望が望める。しかし頂上はまだ遠い。
再び鞍部に戻りそのまま直進すると岸壁をよじ登る。左右とも切れた細い急な尾根を
登りきる。後は何度も登り降りを繰り返しながら高度を稼ぐといつのまにか野登山の
高さを超えている事に驚くだろう。この南尾根コースは素晴らしい眺めを満喫できる。
5月初めならミツバツツジが尾根を一面に染める。
巨石の間をよじ登る頃には頂上も近い。
やがて緩やかな登りの中、東の頭の仙の石に着く。厳しかったコースを振り返りながら
ゆっくり休憩するのも楽しい。
西の頭へはいったん西に尾根を降り急坂を登り返した15分ほど先だ。
ここからは北鈴鹿の山々が思う存分眺められる。
下山は東に鞍部まで戻り右に白谷コースをとるのも良いだろう。
石谷川の源流に沿って延々と降ると出発点の営林小屋に戻る。
以上は多くのガイドブックに出ている一般コースだがその他に広大な背の低い笹原と
ススキ、そして美しい雑木林の御所平も充分な下調べの後ならお勧めだ。
さらに鈴鹿最大の落差100mの滑滝を望む秘められたコースもある。
南側より遠望する残雪の仙ヶ岳(県境縦走路より)
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鬼ヶ牙
仙ヶ岳の南方にへの字に曲がりながら2キロ以上に延々と続く長い尾根がある。
御所平につながる県境尾根より東に分岐し高度を下げながら石水渓の入り口で終端する。
これは高さこそ400メートルそこそこしかないがきわめて個性的な風貌をもつ特異な山域である。
南から見ると絶壁を形作る大きな岩の間をぬって枝ぶりの良い松が見られ水墨画の世界を
思わせる。
この辺りの峰を鬼ヶ牙と呼び石水渓の景観を引き立てるのに欠かせない存在である。
眺めが素晴らしいこの峰も一部のルートを除けば崩れやすく風化した岩盤と絶壁で登山には
細心の注意が必要だ。
特に北東側は石谷川に面した絶壁で登攀、下降共きわめて困難である。
南西側は通称三つ淵の辺りからと船石林道に入ったすぐの橋の手前から踏み跡があり
尾根に出られるが往路を戻るのが賢明である。
尾根は一応歩けるが部分的に崩壊した岩盤にさえぎられたり支尾根に迷いこむこともある。
しかしところどころ姿をあらわす仙ヶ岳や臼杵岳の眺めはこの尾根からしか望めない価値がある。
遠望する鬼ヶ牙の南端 石谷川側より見る鬼ヶ牙の絶壁
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御所平
仙ヶ岳から南西へ延々と続くなだらかな尾根が御所平である。
起伏の激しい南鈴鹿としては異色の山域であり古くは戦いに敗れた武将が
家来一族と隠とんしたと伝えられる。
穏やかに見えるこの高地も入山は容易でなく脚力と時間に恵まれた登山者の
領域である。
特に夏季から秋にかけては部分的に背丈を越す猛烈な萱に視界を奪われ仙ヶ岳
より安楽越への縦走の難所である。やはり適期は早春から初夏までだろう。
全体としては背の低い笹原で快適な歩行を楽しめるが鹿など獣のテリトリーである。
8時間程度の充分な時間があれば安楽越から県境縦走路を延々と北上して
仙ヶ岳に至るのが最高だが普通は葺谷から入ることになる。
ルートは荒れており谷の上部は猛烈なガレ地帯で稜線に登れる場所は限られている。
それでも尾根に上げれば快適な高原気分が味わえるだろう。
滋賀県側も伊勢側も眺めは良く次第に近づく仙ヶ岳は魅力である。
広々した潅木の林でたいていは群れをなした鹿や猿に会えるだろう。
杉の植林が盛んだった頃に設置された鹿止めのフェンスが今は不要になったのか
朽ち始めている。御所峠に近い萱の原は晩秋に訪れると風に萱の穂が波打ち
時を忘れて見とれることだろう。
御所峠に降りたらそのまま御所谷を下るのも良いし体力と時間に余裕があれば
仙ヶ岳に登るのも良い。
御所平の笹の原越しに仙ヶ岳を見る 御所平の北端 萱の原と仙ヶ岳
残雪の御所平からの眺め。後方は仙ヶ岳から宮指路岳に続く稜線。
残雪の御所平から鎌ヶ岳、御在所岳を遠望する。
御所平からの融雪を集める石谷川の滝(白雲の滝)