忘れ得ぬ故障の数々  TOP PAGE に戻る

長い間には様々な設備トラブルがあった。
印象に残っている事例を思いつくまま書いてみた。

電源は盲点

日進月歩で新しく高機能の設備が導入されていく。
でもしばしばその陰でシステムを支えている電源を軽視すると痛い目にあう。

例:構内交換機を更新した。電子式で小型高機能だ。でも停電したら全ての
電話が使えなくなった。これは重大だ。火災にでもなれば119番の通報で
さえできなくなる。直ちにバッテリバックアップを設置させた。
同様なことは昨今ブームのISDNにも言える。

例:コピー機を位置替えした。安易に近くのコンセントから電源をつないだら
使用中は電圧が15%も降下する。これではまともに機能しない。
100ボルトラインは許容電流以上に電圧降下を考慮しないと失敗する。
結局OA機器専用に配線を増設した。

例:最近どうも、ある設備が異常動作する。なかなか原因がつかめなかったが
やっと内蔵の安定化電源が不安定化電源と化していることがわかった。
経験論だが故障したときは先ず電源の運転中電圧をチェックするべきだ。
一般に最も速く劣化する電子基盤は電源ボードである。

そう言えば数年前に大阪であった電話局のシステムダウンは安定化電源の電圧が
中途半端に降下していたためだった。デジタル技術者は電源は正常かゼロの
ふたつしか無いと考えてバックアップシステムを設計したようだ。
しかしデジタル機器でもその電源はアナログ技術に支えられているのだ。

要注意の零相変流器

高圧回路での電線素通しの零相変流器は絶縁劣化を起こしやすい場所だ。
あたりまえに考えればわざわざ高圧の電線を相互に接近させ不均等な電位の
元におけば被覆の絶縁が劣化して当然だ。

いいかげんなゴムのスペーサをはさんだ程度ではコロナでカーボン化しやがて
は相間短絡になりかねない。
このようなZCTは使わないでケーブル貫通タイプにした方が安心だ。

例:電線素通しのZCTで被覆がコロナで焼け白変しているのを見つけた。
スペーサのゴムも同様にカーボン化が進んでいた。
結局撤去してケーブル貫通タイプのZCTに交換した。新規にケーブルを
端末処理するのは厄介なので既設ケーブルに取付簡単な鉄心分割型を採用
した。

実際電線素通しのZCTの事故あるいは事故寸前で発見するケースは多く
高圧配線の要注意場所だ。


PHが低い

塗装ラインの水洗ブースの配管がよく水漏れを起こした。
漏れ場所を外してみると配管の鉄の部分がすっかり溶けて無くなっている。
ポリエチレンライニング管に交換しても2ー3箇月で鉄部が溶ける。
水は塗料カスと接しているのでPHを調べたらPH3程度の酸性になっている。
これでは鉄は溶け出すはずだ。
塗料が時間経過で変質し酸性になるとわかった。
そこで時々水酸化ナトリウムの適量を入れて中和してやったら腐食は無くなった。
もっともしばらくしたら、このいやな塗料も仕様変更でなくなりほっとした。


UV管で悩む

めったに無い故障は経験が役立たず手間がかかることが多い。
塗装ラインの焼き付け炉のガス燃焼炉のバーナーがたまに止まってしまう。
再着火しないでアラームとなる。温度が下がり品質管理上深刻だ。
しかしいろいろ調べたがなかなか原因がつかめない。
一応疑わしい炎検知器(UV管)やバーナープロテクタや電磁弁を交換
したが直らない。たまになる幽霊故障だからたちが悪い。
せいぜい番人を置いてバーナー消えたら直ちに再着火させるだけだった。

この手のトラブルは頻繁になると原因追求がやりやすい。
やがてやはりUV管が疑わしいとなりソケットも含め交換したら完全に
直った。結論はUV管のソケットの接触不良だった。
UV管は消耗品で2ー3年で交換していたがソケットはそのまま使っていた。
そうしてみるとソケット無しでリード直出しのUV管もメリットはある。


信用できないコネクタ

その1.
メンテナンスに欠かせないコネクタも時により厄介なトラブルの原因となる。
サーボモータが時々エラーとなるので交換したが直らない。
サーボモータのコネクタも何度かクリンアップしたが同じ。
ふとした事でアンプまでにもう一個所コネクタが設置されていることがわか
った。
普通によく使うキャノンタイプだが接続部の抵抗が50オームにもなっていた。
どうやら微少な油膜が原因らしかったが結局端子箱を設け直結した。
それ以来コネクタは信用しないことにしている。

その2.
ネジ締め用のサーボモータが頻繁に断線エラーとなった。
現象は継続せず締めているときだけ瞬時に起こるようだ。
モータを変えても直らず。
結局機械的な振動でコネクタが接触不良を起こすと判明。
コネクタを廃止、直結した。


スターデルタースタート

スターデルタースタートは200V5.5kw以上のモータに使われるが
これが原因するトラブルもある。
問題点: 2コンタクタ式は停止時でも通電状態である。
このため湿気の高い場所で使うと知らず間にモーターが絶縁不良で
絶縁破壊することがある。これは停止中のモーターは温度が低く
湿気を呼び易いからである。消火栓ポンプのモータでいざというとき
機能しないと大変なことになる。
原則として3コンタクタ式にすべきである。

問題点:ポンプを整備するためモータを外しはじめた。停止しているので
通電していないと思って端子箱を開けたら感電した。
当然メインスイッチを開放してから作業すべきだがスターデルタ
スタートはこのような勘違いも起こす。
3コンタクタ方式にすべきだ。

問題点: スターからデルタへの切り替える瞬間に操作電源のトランス容量が
少ないと操作電源が電圧降下を起こす。
その結果切り替えタイマーがリセットしまたスターから運転を始め
これを繰り返してモータを焼損した事例がある。
操作電源容量に余裕を持つのとデルター回路には自己保持を入れる
ことだ。

問題点: ブロワーで使っているときにスターデルタ切り替えタイマーが効か
ずいつまでもスターでの起動電流が流れモーターが焼損したことが
ある。運が悪いケースだが重要個所なら監視用タイマーを設け
スター状態が設定以上続くと遮断する回路も必要だ。


コインサイデンタルトラブル

めったにあることではないが複数のトラブルが同一の設備で同時発生する
ことがある。
このような場合おうおうにして原因の発見と修理に手間取ることがある。
例えばサーボアンプとモータで同時に故障が起こったとき
先ずアンプを交換するだろう。しかし結果が同じなので元のアンプに戻す。
次にモータを交換する。しかし結果が同じだと迷ってしまう。
こういう時に次々と部品を交換して真の原因発見まで長い時間がかかる。
同時に発生するところからコインの両面の意味でコインサイデンタルトラ
ブルと呼んでいる。


ボイラートラブル

炉筒煙管ボイラーを連続30年近く使ってきた。毎年定期検査があるから
整備をするのでそれなりに使用に耐えたのだろう。
しかし何度かトラブルも体験した。

缶内が真っ白:検査のときに缶内が真っ白になっていてびっくり。
給水の軟水装置が切替えバルブでリークしていた。
そのためカルシウム分が壁面に付着した。
だから軟水装置のチェック口では完全な軟水でも実際の給水は
硬度の高い水となっていた。
それ以来軟水のチェックはサービスタンクでするようにした。
白くなった缶壁はその後の使用である程度はく離もしたが完全には
取れなかった。

突然低水位: 突然低水位でストップした。給水のサービスタンクからも
湯が噴き出ていた。原因は給水ポンプの後に付いている逆止弁
にサビこぶが噛み込みたちまちのうちに高圧の湯が給水側に
逆流したため。
この逆止弁、頑丈そうだがたまにはリークで同様のトラブルを起した。

しまった: その日のボイラーの運転を終わり出口弁を閉めてからしばらくして
安全弁から水が吹き出した。圧力計は危険領域に上がっている。
一瞬青くなった。ブローした後水位を上げるのに手動給水にして
止めるのを忘れポンプの給水圧がそのままボイラーにかかったのだった。

黒煙もくもくその1:寒い朝なかなか重油バーナに着火しない。何度かやっているうち
炉内に重油が貯まってしまった。やっと着火に成功したがしばらくは
煙突から猛烈な黒煙が。公害で通報されないか冷や冷やしながら
煙が消えるのを待った。その後B重油からA重油に替えこのトラブルは
無くなった。

黒煙もくもくその2:突然煙突から黒煙もくもく。のぞき窓から炉内をみたら
燃焼が片寄って変だし煙がすごい。間もなくロータリーバーナー
のベルトが切れたのだとわかった。その後もベルト切れはあったが
たいていは失火検出し自動的に燃料供給停止になるのだが。

突然熱湯が吹き出す:突然水位計のガラス管が破損して猛烈な勢いで熱湯が吹き出し
危険で側にも寄れない。低水位でボイラーは停止したが圧力は直ぐには
落ちないから手の付けようも無かった。やっとの事で水位計のバルブを
閉めて一件落着。まあこんなときは冷静になって自分の身を第一に
対処することだ。ガラス管は毎年新品に交換はしているが希に割れることもある。

重油がドバーッ:突然重油のサービスタンクから重油がオーバーフロー、防油槽は重油で一杯。
サービスタンクの液面制御スイッチがヒンジ部で堅くなり上限で差動
しなかった。幸い予備に付けてあった防油槽の非常用液面スイッチで
重油の更なる供給が停止し外部には流れ出さなかった。
こぼれだした重油の処置は極めて厄介だ。よく新聞で工場から河川への
重油流出事故を見るが液面スイッチや電磁弁は故障するもの。
必ず2重3重にバックアップしておいて損はない。


後でわかったムカデ一匹

昨今なぜか受電室でノイズ検出式の絶縁警報が出る。接地継電器が作動する
ほどではない。気にはなったが原因が分からずそのうちに直ってしまった。
何箇月かたったころ定期点検で高圧盤内を調べていたら樹脂のガイシの上に
カラカラに乾燥したムカデの死骸が乗っかっていた。
どうやら以前の警報はこのムカデが犯人だったのかと納得した。


絶縁抵抗測定

絶縁抵抗測定は高圧はもちろん低圧も配電盤までは所定の値を維持する必要がある。
しかし配線が複雑に入れ込んだ機械設備の内部は単純に良否を判定できない。

その理由は5ボルトや24ボルトの制御配線と動力配線が混在していてメガーの
測定用強電圧に弱い半導体部分がある事。
端子台等で切削水でぬれていてメガー値は低いが支障ない場合が多い事。
また逆にメガー値が規定以上あってもわずかな漏洩電流が弱電流の回路に入り込み
思わぬトラブルを起こす事だ。

例:モータ回路の絶縁をテスターで測ったA君 0.2メグオームしかないという。
そこでB君が再度測った無限大だったと言う。
もう一度よく検証したらA君はテスターリードの黒をアース極につなぎB君は
赤をアース極につないでいた。本来はどちらでも同じ値を示すはずだが切削水が
コネクタ部に浸入し銅電極と外装の亜鉛合金との間に電池を形成していると判明した。
結局250ボルトメガーで測ると1メグオームだったがコネクタを清掃したら無限大に
なった。

例:モータの絶縁が 0.1メグオームしかなかった。テスターでもわかるほどだ。
長く運転していなかったモータなので湿気をすったらしい。それでも問題無く
運転できしばらくしたら絶縁は良くなった。このようなケースは多い。

例:サーボモータがハンチングする。ドライブアンプを換えてもモータを換えて
直らない。ケーブルの絶縁を測ったら5メグオームはある。それでも念のため
コネクタを交換し絶縁を無限大にしたら完全に直った。
迷走漏洩電流がエンコーダの部分に悪さをしていた可能性がある。
サーボドライバーアンプもインバータの一種だから不具合時は先ずサーボモータ
への配線を外しケーブル、コネクタ、モータの絶縁を確認するのがよい。
漏電はしばしば珍現象を引き起こす場合がある。


メモリバックアップ

シーケンスコントローラー等のメモリー保護にはリチウム電池等が
使われほとんど忘れるくらい長期間メンテナンス不要だ。
電池寿命によるメモリー消失より電池交換をしたときのミスによる
消失の方が多いようだ。
電源を切ったままNCの電池を換えたり内蔵コンデンサでの保持時間から
決められた時間以上に基盤を外したりした場合だ。
電池交換の頻度をメーカー推奨より減らし交換時はベテランに任すのが
賢明だ。それと他の媒体、フロッピとかROMカードでバックアップを
取っておくこと。

失敗例:長期連休中に停電作業があるのでNC機器のメモリバックアップ
電池を交換することにした。
依頼されたメンテマンはメインスイッチを切ったまま交換し全てのデータ
が消えた。笑えない悲劇であった。

失敗例:長期連休中に停電するのでシーケンサーのメモリーをフロッピに
取ることにした。依頼されたメンテマンはGPPの操作を間違え空白の
プログラムをシーケンサに落とし込んだ。
RUN中ならミスは起こりにくいがRUN中書き込みモードにされる可能性
もないとは言えない。

しょっちゅうやらない操作はミスを起こし易い。ベテランでも安心できない。

失敗例:アルカリ乾電池でバックアップしているNC装置があった。
電池は充分あるはずなのにメインスイッチを切ったらメモリが消えた。
調べたら電池の受け舌の金属片で接触不良になっていた。
一般の乾電池を使用するタイプはこの手のトラブルが多い。
やはりリード直出しのリチウム電池が一番良い。


手抜きモーター交換

モーターが焼けたので交換することになった。
予備のモータは一見同型だがシャフトの形状が違ってそのまま交換できない。
そこでシャフトとロータをそのままにし外枠つまりコイル部だけ入れ替えた。
ところが翌日またそのモータが焼損した。
調べたらローター径が1ミリ程小さく電流が以前より多くなっていた。
同一型でも生産ロットによりロータ径にバラツキがあるのだ。
交換した後運転電流を測っておけば異常に気が付いていただろうが。

モータの漏電

モータの漏電は焼損した場合を別にすれば油水の浸入がほとんどだ。
全閉モータでもフランジの隙間から水は浸入する。排出し難いから
溜まる一方で最後は漏電焼損に至る。
比較的効果があるのはフランジのハメアイ部に液状ガスケットを塗布し
最下部に水抜き穴を設けることだ。
それとモータの上部に水よけカバーをかぶせる。
30ミリアンペア感度の漏電ブレーカを設置しておくと軽度の漏電の内に
遮断するから分解乾燥すれば焼損は防げる。

経験例:機械にフランジ取付したモータ(フランジタイプ)がよく漏電した。
内部は油水が溜まっている。
どこから油水が浸入するのか調べたら機械側のギヤーボックスの
油水がシャフトを通じて入り込むとわかった。
そこでモータの取付部に下向きに溝を切り油水が逃げるようにした。

経験例:新品のNC旋盤の別置型エンコーダが1週間で故障した。
取り替えてもまた1週間で壊れたので分解したら水が入っていた。
しかし周囲に水はない。運転中に監視したら切削水がエンコーダの
ケーブルを伝わり入り込んでいた。水は常に低い方に伝わる。
ケーブルのサポートをエンコーダに対し上向きに勾配をつけ解決した。

昇圧現象

トランスで昇圧しない限り電圧は下がることはあっても上がらないはずである。
しかしトランス無しで電圧が上がる場合がある。
誘導リアクタンスのあるラインで容量性負荷に進み電流が流れる時に昇圧現象が起こる。
6000ボルト高圧送電線で変電所の送り出し電圧より200ー300ボルト
高いことがあった。これは力率改善コンデンサのため進み電流が流れたためだ
った。要するに昼間負荷設備が運転している時は問題無かったが夜間は
実質上コンデンサーだけになったのである。
コンデンサも不要なときは自動的に切り離すのが望ましいのはこのためだ。

別な事例としてトランスも使っていない機械で供給電圧が200ボルトなのに
300ボルト以上の電圧が出てきた。
この原因は波形にあった。
テスターの場合正弦波であることを前提に電圧表示をしている。
ひずんだ波形だと実に様々な電圧になりうる。
ではなぜ波形が歪んだのか。
マグネットコンタクタの接点が摩耗し半接触して放電しながら通電されていた。
そのためテスターに奇妙な電圧が表示されたのであった。
またインバータの出力電圧などはテスターで計るとまるで違った指示をする
こともある。


希な故障

長く保全業務についていると希な故障を体験することもある。
乾燥炉のバーナーが途中で消える。でも再点火するとしばらくは燃える。
これの繰り返しだ。ガスの電磁弁も異常無い。バーナーコントローラを
交換しても同じ。フレームセンサーも交換しても同じ。
実にミステリーだった。
根気よく監視していたら電磁弁がやはりシャットオフするとわかった。
しかし通電はされている。
電磁弁のコイルが一部半断線しており温度が上がったときだけ断線状態に
なることがわかった。つまりサーモスタットになっていた。
冷えるとすぐに復旧するので単独で何度導通チェックしても異常無いはずだ。


見えない場所は要注意

アルミの溶解炉で珍現象が出た。
どう考えても制御配線が混接触しているようだ。
各所のジョイントBOXを調べたが異常無い。
やっとの事で疑わしい個所を絞り込み配線交換をすることにした。
ところが普通なら引けば配管から抜けるはずの配線がびくともせず引き抜けない。
そこで配管をよく見ると一部に火炎であぶられた跡がある。
どうやら作業者が近くで酸素切断をしていて一緒にあぶったらしい。
配管を取り外し問題個所を切り開くと絶縁のビニルが溶け管の内面にこびり
付いていた。これでは抜けるわけが無い。
結局配管配線を全部交換し復旧した。

アルミの小型溶解炉が着火しなくなった。調べていくと以前にも経験した
埋設配管内での配線混蝕らしい。この部分は埋設配管にも熱が伝わることが
わかり前回に全て耐熱電線に換えているから問題無いはずだ。
ところがジョイントBOXを開けてびっくり。何と安物のビニル絶縁配線
に戻って居るではないか。こんな逆行することをする奴は何処の誰だ。
現場に抗議をすると先日、炉業者が追加工事で改造していったそうだ。

結局またしても埋設配管に熱がかかり内部のビニル絶縁電線が熔けたのだった。
業者任せにするととんでもない工事をやられる。
その後耐熱電線に戻したことは言うまでもない。




油送配管の失敗談

1.漏れる配管継手

100m近くの重油配管を新設した。メインタンクからポンプで使用場所の
サービスタンクまで圧送する構造だ。ポンプの入り切りはサービスタンクの
レベルスイッチで制御する。但しポンプが停止しても落差で重油が流れ落ち
サービスタンクがオーバーフローしないようサービスタンクの手前にポンプ
と連動する電磁弁を付けた。
ところが使用を開始したら何個所かの配管継手のネジ部で漏れが出始めた。
けっしていいかげんに施工した配管でないから納得いかない。
やはり異常なサージ圧がかかっているとしか思えなかった。
可能性があるのは電磁弁が閉まるときのハンマー現象だ。流れている流体
を一気に止めた時のエネルギーは想像以上に大きく逃げ場が無いと様々の
支障を起す。
そこで配管の途中に安全弁を設け出口はメインタンクに戻した。
それ以降漏れはなくなりもう何年も使っている。

2.大切な戻り配管

30年近く前に重油暖房機に送油する200m近くの配管をした。
メインタンク近くのポンプで暖房中は常に圧送する方式だ。
サービスタンクは無く直接暖房機のバーナーにつないだ。
この配管は失敗だった。配管中のエアーが抜けずバーナーが度々失火し使い物に
ならない。
結局もう一本配管を増設し戻り配管とし暖房機の圧力調整弁経由で送油管とつないだ。
このやり方はサービスタンクを付けない油配管では常識だが当時では誰もわから
なかった。その後この経験は油送配管の新設に役立った。

3.熱源転換の後で

灯油を熱源にしていた溶解炉をガスに転換した。従来の灯油配管はそのままガス
に使うことにした。しばらくはどうも無かったがやがてガスの減圧弁のトラブルが
頻繁になった。分解するとタール状の異物が入っていた。灯油配管に残っていた
油分がタール化したようだ。それでも徐々にトラブルは無くなった。
でももし重油からガスだととても配管の流用はできなかっただろう。


深井戸ポンプ

地下60m程下に設置した深井戸用水中ポンプ(11kW)があった。
既に28年間も使っていて特に問題はなかったのだが昨今急にくみ上げが悪くなった。
モータ電流は正常だから何処かで水がリークしているようだ。
結局ポンプを吊り上げることにした。しかし井戸の穴は20センチ程度でもし途中で
パイプが折れてポンプ共に井戸の中に残ったら絶対に拾えないから井戸共廃棄しな
くてはならない。新規に井戸を掘れば1000万以上の費用がかかる。
真っ赤に錆びたパイプには上部に腐食穴があいていた、どうやらここからリーク
していて水圧が上がらなかったようだ。幸いポンプは無事に姿を現したが新品に更新した。
それにしても28年間も休みなしトラブル無しでよく働いてくれたものだ。
どうやら内部は酸欠状態だから錆びもあまり進行しなかったようだ。

深井戸水中ポンプは水質等で寿命に大きく差があり数年で故障する場合もあるし
今回のように30年近く使える場合もある。
この種のポンプは水冷式で熱的余裕が無いから水が無いと瞬時に焼損する。
だから新規の設置は特に注意が必要で取扱説明書を熟読する必要がある。
井戸自身30年も経つと目詰りや周囲環境の変化で汲み出し可能な水量に変化が出る。
だからいつも昔の能力が確保できるとは限らない。


やみに葬る

もう25年近く前になる。当時ブレーキデスク板の焼き入れに高周波加熱装置
を使っていた。約30KHz150KWというまあ中規模のラジオ放送局の
発信機を設置していたようなものだ。
これにはラジオ送信機で使われているのとほとんど同じ真空管を使っていた。
水冷式3極管でプレート部は本体の大半を占めむき出しの部分をどっぷり
水に漬け多量の冷却水を送って冷やしていた。
カソードになるフィラメント部でも数KWの電力を消費するので予熱中でも
冷却水は欠かせなかった。
真空管は当然寿命があり次第に出力が出なくなる。
そこで新品を購入し交換することにした。価格は150万円ほどした。
交換後テストするのにフィラメントだけ通電しておいた。
忙しかったので現場を少し離れていて戻ると設備の底から水が吹き出して
いる。扉を開けると真空管は赤熱しガラスはクラックが入り呆然とした。
径が40mmほどある冷却水のホースがニップルから抜けて冷却されて
いない。全ては後の祭りであった。
元の真空管に戻しておいたが一瞬に150万円がパーになったとは報告できず
やみに葬った。
もちろん保護の流水スイッチは設置してあったのだが異物がかんでいて
働らいていなかったのだ。
これ以来大切な部分のホースニップルの締め付けバンドはかならず2本使う
事にしている。
それと流水スイッチも圧力式とフロー式のダブル設置としている。


超人為的

長い間にはいろいろあるものだ。
ある溶接設備で盤内の操作トランスが焼けたと連絡があった。
早速行ってみると10センチ大のトランスの絶縁紙の部分が焦げている。
ところが表面だけで内部がヒートした形跡はない。
運転中のトランス温度も問題無い。
とりあえず予備品と交換し様子をみた。
時々見に行ったがトランスは冷たいままだ。
数日後またトランスが焼けたと連絡が来た。
行ってみると前回と全く同様に絶縁紙が焦げている。
ここで密かに感づいた。これは誰かがライターで焦がしているのだと。
ことが重大なので人事担当に報告したら最近業務に関したいたずら電話が
連続し密かに調査していることがわかった。
何日か後今度は建物の一部が燃えだす事件があり警察も捜査に入り込んだ。
捜査の結果ある従業員が給与その他に不満を持ち嫌がらせを続けていたと
判明し逮捕された。
しかし電気知識の無い犯人で助かった。もしその気になればハイテク機器の
多い昨今のこと、復旧に多大な時間のかかるダメージを与えることなど
わけないのだから。


安定器

HID光源を含む照明器具には安定器が欠かせない。
これの故障は希だが内部で短絡するとランプは一瞬に破損する。

例:水銀灯のランプ切れで新品のランプに交換したが点灯しない。
ちくしょう不良を売りやがってともうひとつ持ってきたがまた同じ。
こんなはずはと3度目は慎重に観ていたら一瞬光り消灯する。
安定器が不良らしいと分かり今度は安定器を変えランプも新品に換え
やっと直った。
それにしても3個も新品のランプをオシャカにするとは。


接触不良

接触不良は意外な場所でもまれに起こる。
新品の押しボタンスイッチやマグネットスイッチでしかも200ボルトの
ような強電圧開閉でもまれに経験する。

24ボルト以下の定電圧小電流開閉ではよく経験する。
その防止は無接点化と接点のダブル使用が効果的である。
要は普通のリレーの接点は新品でも信用しないことだ。

体験例1:新品のサーボアンプが機能しない。
基盤を換えても同じ。内蔵のマグネットスイッチの接点が200ボルト
にもかかわらず導通していなかった。
表面に薄いガラス状の膜が付いていたらしく一度擦り取れば2度と発生し
なかった。
体験例2:計数器がカウントミスをする。どうやらドライブしているリレー
の接点不良らしいので接点を2個並列にした。それ以降正常になった。

素人は恐い

突然動力のコンセントが火を吹いた。
プラグの金属部は溶け絶縁ゴムはカーボンと化している。
プラグを挿入した作業者は手袋をしていたので火傷こそしなかったが
眼が眩んで当分見えなかったそうだ。
調べてみるとその作業者は扇風機の場所が気に入らないので位置変えを
しにかかったがケーブルが短く適当なケーブルを拾ってきて自分で継ぎ足した
そうだ。
つなぎ目をばらしてびっくり。R−S−T−E 全ての芯線が一緒につないで
あった。
それにしても素人は恐い。


台風襲来

学生時代は喜んだ台風も保全屋となればどうか来ないでくれと祈りたくなる。
豪雨となれば工場の各所が浸水するし雨漏りで思わぬトラブルとなる。
強風となれば停電はするし飛来物でなにが起るかわからない。

台風が近づいてきたので全ての出入り口のシャッタを閉めた。
暴風雨警報が出て一般作業者は皆帰り保安要員だけ残った。
暴風雨の深夜突然シャッタが一個所開いた。誰も開けてなんかいない。
シャッタ閉めのボタンを押したら下がり始めるのだが下降端でまた開き出す。
雨は建物内へ降り込んでくるし設備の電装盤に水はかかるし必死で防水シートを
かぶせることとなった。
後でわかったことだが横降りの雨がシャッタの操作回路に入り電流がリーク
してシャッタ開のマグネットスイッチが入ったためだった。
シャッタの電源を全て切っておけば良かったが後の祭りだった。

台風が来た強風の晩、構内架空高圧配電線(6600V)の電線が火を吹いた。
停電して火は間もなく消えたが調べたら飛来してきた松の枝が架線上に乗った
ためとわかった。湿った松の枝なんか導電体そのものだから当然だろう。
停電したのは一時的に相間短絡になって遮断器が作動したからだ。
最も現在の高圧架空線は高圧絶縁電線を使っているのでこんなことは無いと
思うが当時はOC線等無い時代で高圧線は裸線が普通だった。



半田が付いていない

もう10年近くたいしたトラブルも無く使ってきたシーケンサーの
CPUが時々エラーを出すようになった。
何もしなくても直ったりするかと思うと数日先に再発する。
CPUを交換してら直ったかにみえたが再度発生。
思い切ってマザーボードを取り外しルーペで基盤を眺めたら何と一部の
半田付けが最初からしてなかった。
しかし10年近くも異常なく作動していたとは驚きだった。

半田がはがれる

半田が基盤からはがれる現象は数年使った基盤や熱応力等で機械的な荷重
がかかる部位では比較的多く経験する。
このような事象は製造工程での半田の温度等の条件に関係するようで
同じ製造ロットの基盤だと一個所だけでなく次々と波及発生するようだ。
多くの場合幽霊トラブルとなり追求に時間を要する場合がある。


犯人はポリ袋

突然に冷却水が出なくなった。ポンプは回っているし何度か呼び水しても
同じだ。どうしてもフート弁あたりがくさいので水槽の水を全部抜いて
調べることにした。
そうしたらあっと驚いたことにポリ袋がフート弁の吸込み口にピッタリ
吸い付いていた。以前マンホールを開けて工事していたとき風で飛んできた
袋が水槽に入ったらしい。こんなときはフート弁の吊り上げが簡単にできる
ようになっていた方がよい。水槽の水を全部抜くのは厄介である。
しかし注意しないと吸込み管のつなぎフランジからエアーを吸込みポンプが
おかしいと悩むこともある。

変圧器が破損

めったに無いが電力用の変圧器が破損したことがある。
突然6,600ボルトの分岐盤の電力ヒューズが飛んだ。
深夜で軽負荷だから過電流はありえない。
負荷を開放し電力ヒューズを交換し再度分岐開閉器を投入したら
目の前で同じヒューズが飛んだ。さすが限流ヒューズだ、音もしない。
ラインの絶縁は良いので短絡事故らしい。
負荷側を調べたら高圧モータ150kW3,300Vの巻線が地落短絡していた。
どうやらトランス2次側の事故のショックで1次側の巻線がショート
したようだ。
トランスまでのケーブルに異常は無かったのでやはりトランスが破損して
いると結論し緊急に手配した。
負荷側のモータは予備機があったがまさかトランスが破損するなど予定外だ。
後日トランスの中身を吊り上げたら絶縁紙は破れコイルは移動し相互に
接触していた。でも油中なので絶縁は良かったわけだ。
トランスは機械強度を上げるため1ランク容量を上げ2次側のモータの
限流ヒューズを適正にし対策とした。

どこの圧力?

圧力は圧力計で測る。これはあたりまえだ。しかし圧力計で測っているのは
ポンプの圧力でもなければ配管ラインの圧力でもない。
あくまで圧力計に到達した圧力なのだ。

例:油圧ポンプの圧力が低いと苦情が来た。
確かに定格より大幅に低い。
圧力計を新品に替えても同じなのでポンプが悪いと判断し新品の
ポンプに交換したが変わらない。
どこかで多量にオイルがリークしているのかと徹底的に調べたがその
形跡はない。こうなるとミステリーだ。
頭を冷やして考え直した。ふと気が付いたのは圧力計に付けられた
プッシュ式の圧力チェッカーだ。もしかしてとこれを外し直結したら
いきなり圧力は健全なポンプ圧となった。
このチェッカーはドレンポートが付いており内部のリークで通過する
圧力が大幅に低下していた。これでは正確な圧力など表示できるわけが
ない。

同様のことは温度計でも言える。センサー付温度計の温度は炉の温度でも
溶湯の温度でもなくあくまでセンサーの温度なのだ。
センサー保護管越しに測る温度は実際よりかなり低いことがある。



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