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やぶにらみの保全屋の裏話等、真実ここにあり。
TPM裏話
自分の設備は自分で管理して生産性を上げようなんてカッコよく言い出した
TPM活動。
でも裏では四苦八苦。素人がいじれば機械はトラブってあたりまえ。
まあ専従で頑張っている役員さんや担当者もいるから彼らの立場も立てて
やるのが日本企業に長く働くものの人情、道義というもの。
例1.普段はやったことも無い場所の掃除など始めるものだから突然設備が
珍動作。調べたらセレクトスイッチに無意識にさわり切り替わっていた。
例2.内部の構造も原理も分からず重要個所の潤滑油のストレーナを点検
するものだから異物が給油穴に詰り軸が焼き付く大損害。
例3.元々監視してもいなかった圧力計を管理項目に入れるものだから仕事は
増えるし圧力計はすぐ破損したからと交換要求してくるし時間のムダ経費の
ムダ。
例4.たまにしか使わないけど捨てることはできない特殊工具。現場のキャビ
ネットに入れておくと役員の監査で指摘されるから安全地帯の制御盤BOXの
中へ。おまえらなあ.....
そんなことこんなことでどんどん増える突発故障件数と修理時間。
TPM活動だから故障件数は減らさなければ自分たちも含め皆が困る。
でも数字って面白い。突発件数や修理時間は計画工事件数や改善工事時間に
組み入れてやれば報告書類は問題無しだ。まあそうでもして表面的に効果を
上げれば担当者はもちろん役員も喜ぶ。
さあ明日は審査日だ。机の中も整理整頓。捨てるわけにいかない多量のブツ。
どうしょうかなあ。そうだ最高の安全地帯、自分達の車のトランクに一斉移
動だ。でも審査が終わったらあれは何処だ、これはあそこだ。作業効率は
がた落ちだ。でも日本の会社ってこんなことしていて平和ですねえ。
改良保全(守りの保全から攻めの保全へ)
予防保全とは故障してから修理するのでなく点検整備を充実させ故障を未然に
防ぎ設備の稼働率を上げるための保全手法。でも言葉だけ乱用され馬鹿のひとつ
覚えとなっている。現場から離れデスクワークに徹し役に立たない資料ばかり
作り業者への手配師と下落した保全マンが目立つ。その結果増えた故障をデータ
を操作して覆い隠すのも仕事のうちとなった。
潤滑油管理など定期的な点検整備が不可欠の分野もあるがそれ以外には言葉と
書類と業者まかせの予防保全より改良保全を心がけるのが大切である。
故障の事象を現場で徹底的に考察し再発を防ぐ歯止め修理に徹するのだ。
例:リミットスイッチが故障した。分解すると切削油が浸入している。
縦形のリミットスイッチを横方向に取り付けているのでケーブルの口出し部から
切削油がわずかづつ浸入したと判断した。そのまま交換するのでなく取付方向を
変更しケーブルの口出し部を下向きにした。
例:ローラープランジャタイプのリミットスイッチがONしたままになった。
元々プランジャタイプはプランジャ部がかじって入りぱなしになり易い。
ドグと取付穴を改造しローラーレバータイプに取り替えた。
例:近接スイッチが破損した。直接製品を検出しているので時々ぶつかりこすった
ため検出面が擦り減っていた。そこで以前より検出距離の長いタイプに交換した。
例:シリンダに設置された磁気式のセンサーが故障した。周囲には切り屑が
堆積し磁気を弱めていた。もともとこの種のセンサーは悪環境での使用に
適さない。
新規にドグを設けリミットスイッチを設置して従来の磁気式センサーを廃止した。
例:モータが故障した。端子箱に切削油が入っていてそこで絶縁破壊していた。
端子台を取り外しリード対リードの接続とし耐水信頼性を上げるとともに
モータに鉄板で屋根状のカバーを設置した。
例:エアーチューブからエアーがリークしている。焼けた鋭い切り屑が当たり
プラスチックのチューブでは弱いようだ。細い油圧用のゴムホースに交換した。
例:鋼管の油圧配管が破損した。くい込み接続の部分でクラックが入っている。
パイプの肉圧は1ミリだった。そこで1.5ミリのパイプにやり変えた。
例:スピンドルのベアリングが壊れた。見ると切削油が入っている。
スピンドルの軸シールカバーに穴を設け弱いエアーを送ってエアーパージ方式の
シールを追加した。
例:幽霊トラブルが出ていた。2ー4時間に一度設備が加工途中で止まる。
止まった後で調べても現象が消えていて探求できない。
実際シーケンサのモニタをじっと観ていて居眠りが出てくるありさまだ。
それでも少しづつ原因の絞り込みも進みやっとセンサーが時たま誤作動すると
わかった。センサーは交換したがそれだけではまた同様のトラブルを起こしかね
ないのでシーケンスプログラムを追加しもし再びセンサーが誤作動したら記憶し
操作パネルにセンサー異常の表示を出すようにした。つまり故障の自己申告で
ある。
同じ予備部品に交換するだけの修理は簡単だがそれでは進歩が無く再び同じ
故障を引き起こす。少々時間と手間はかかっても上記のような考え方で修理に
あたることがプライドと智恵のある保全マンのあり方ではないだろうか。
そしてそのノウハウを新規設備の仕様に反映するよう標準仕様を改定すること
が最も望ましい保全の姿であろう。
角をためて牛を殺す
せっかく不具合個所を直そうとしたことが裏目に出てかえって設備を
壊してしまうことがある。ことわざである「角を矯めて牛を殺す」である。
例1.油圧配管の一部分にホースが使ってあった。だらっとして見苦しい。
きちんと配管してやった。
そしたら数日のうちにネジ部で切断した。
振動で破壊したのだった。ホースの振動吸収性はフレキシブル継手より
確実だ。こんなことなら、やらなければ良かったと反省した。
例2.製品検出に長いアームを付けたリミットスイッチを使っていた。
いまどきリミットスイッチなんて旧いと交換ついでに近接スイッチに替えた
らものの数日使っただけで破損した。
製品の位置のバラツキが多く近接スイッチにぶつかるのだった。
こんな時は製品の直接検出は避け簡単なアームを取付それを近接スイッチ
で確認するのが簡単だ。
例3.研磨機のスピンドルの潤滑油のフィルターが交換時期にきた。
自主保全活動だなんてカッコ良く現業区で替えたそうだ。
ところが数週間もしないうちにスピンドルが焼け付いた。
損害は200万円以上になった。
原因調査でばらしたら針の穴程の潤滑油の噴射口にゴミが詰まってオイル
が流れていなかった。
どうやら軍手をはめた手でフィルターエレメントを入れ替えしたらしい。
流体軸受の給油は機械の心臓部で潤滑油に微細な繊維ですら入るとオイル
穴のつまりの原因になるから我々はきれいに洗った素手で扱うほど大切な
部分なのだ。フィルターがたとえ詰っても保護スイッチがあるから
スピンドルの焼け付きにはならないがその先のオイル噴射穴が詰ったら
救いようが無い。それ以後重要個所のフィルターに保全以外取扱禁止の
ラベルを取り付けた。
日本企業真辞典
VIP:重要来客のことだが通常親会社の役員以上を指す。
気分よく視察を終了させないと後々仕事はもらえないしクレームを出したとき
眼をつむってくれないから視察の間は完璧さが要求される。
改善提案:自主的な創意工夫のはずがいつのまにか各自ノルマができてきて
右のものを左に移して改善1件また右に戻して改善一件。それでもみんな
件数の確保に必死だから見て見ぬふり。
QCサークル:如何に嘘を事実に見せるかの技能発表。そのためそれに秀でた
人材が要求される。全員参加という名のもとに一致団結のはずが実際は個人
の力量が最も発揮されるシステムである。
3S:整理整頓清掃のこと。拡張版で5S等もある。本来の意味以外にVIP
の視察の時だけ作業者も含め見苦しいものを見えない場所に隔離すること。
視察が終われば直ちに元の配置に戻す。
ペンキ塗り:表面的な美観を目的とし汚れた上を覆う年増の厚化粧のこと。
しばしば6角穴付ボルトの頭や銘板にまで塗られて保全屋泣かせとなる。
従業員:株主でもないのに、ここはあなたの会社ですと洗脳されいつのまにか
会社と結婚する馬鹿もいる。でも大半は上手く会社を利用している。
会社って亭主を一日預かってくれて給料までくれる託児所だから奥様族はほくほく。
管理職:昇進の平均的終着駅。残業休日手当て不要の労働力。取締役のスト
レスのはけ口。時々コンパニオン同席のカラオケパーティで飲み食いさせれば
文句も言わない哀れな男達。
取締役:取り締まられ役と言い来年の今、現職にとどまる可能性の最も少ない
立場の職位。
ISO:ISO9000と称する国際的な品質管理優良認定。だが実際は
USO9000とかKUSO9000と呼ばれ審査団体の金儲けに成り下がった。
それがわかっていながら広告になるからと導入したものの止めるに止められ
ない哀れな企業が多い。
さらにISO14000と称する環境管理認定制度も登場しこれに輪をかけている。
予防保全:故障してから修理するのでなく点検整備を充実させ故障を未然に
防ぎ設備の稼働率を上げるための保全手法。でも言葉だけ乱用され馬鹿のひとつ
覚えとなっている。現場から離れデスクワークに徹し役に立たない資料ばかり
作り業者への手配師と下落した保全マンが目立つ。その結果増えた故障をデータ
を操作して覆い隠すのも仕事のうちとなった。
慰安旅行:昨今ではほとんど死語となった過去の遺物なのにいまだにこだわる
企業トップがいる。そしてあまりの参加率の悪さを嘆くことになる。
組合:合法的やくざ組織。上納金を納めるため時々組合費の値上げも必要。
選挙の時期には専従役員を議員先生様にしようとなぜか労使共必死になる。
現場百遍
何かトラブルがあるとデータは?データは? と言う風潮がある。
データは原因調査の補助にはなってもそれで全てが解決することは無い。
服を汚さず設備が直れば結構かもしれないがそんなことは如何に時代が
進んでも不可能である。
例:研磨設備で仕上がり寸法がばらつく。例によってデータは?データは?
とやっている。こんな時はデータ以前に現場で観察するのが一番だ。
そうしたら冷却液をかけているノズルが少し傾いて定寸装置にぶつかっていた。
例:最近ドリルがよく折れる。例によってデータ集めをしている。
材料の硬度を調べたりドリルのメーカに聞いたり時間だけが過ぎていく。
しかし現場をじっくり観察したら加工物のクランプがゆるく少し動くことを
発見した。クランプ圧力を上げたら簡単に直った。
例:旋盤機械の主軸のモータが冷却ファンは回っているのに異常に熱くなる。
負荷を調べたりメーカに聞いたりしているが原因がわからない。
現場で機械にもぐりこんで調べたら冷却空気の出口に多量の埃が油と共に
糊状にこびりつきほとんど冷却風が流れていなかった。
データはしばしば一人歩きをして問題をますます複雑にする。
経験論だが難解なトラブルほど意外と簡単でささいな原因によることが多い。
故障の原因追求は刑事と同様に現場百遍が基本である。
消火栓
工場内に限ればおそらく消火栓から放水が必要になるほどの火災はめったに
ないだろう。たいていは手元の消火器で済ませるだろうから。
しかし長い間には実際あったりする。
その場合冷静に活用できるかは普段の訓練はもちろんハード面での工夫も
大切だ。
消火栓の収納箱の内部にはホースを伸ばしボタンを押すと記載されているが
気が動転していたり暗闇ではホースを延ばしたもののボタンを押さずバルブ
を開けて水が来ないと慌てることが実際あるのだ。
私が推奨するのは高架水槽その他別の水源から逆止弁を界して消火栓ライン
につないでおくことだ。更にその部分に流水スイッチを設置し消火栓起動
スイッチと並列に接続しておく。
こうすれば慌てて消火栓起動ボタンを押すことを忘れていてもすぐに高圧の
放水が始まる。
ここオハイオでは法的に全て工場内はスプリンクラが必須だが専用ポンプは
設置せず全て公共の水道につないである。いざと言うとき停電しても消火水
は止まらないシステムだ。
公共水道はところどころの高台に高さ30Mほどある巨大な高架タンクが
あり供給信頼性は充分だ。
信用するな無視するな
故障の原因調査にその設備のオペレータからの聞き取りは欠かせない。
ところがオペレータも自分のミスはめったに言わない。
オペレータの言うことは信用するな、でも決して無視するなが大切だ。
なにげない一言に問題解決のヒントがあったりする。
例:盤内の操作電源トランスが焼損した。
通常なら過負荷はまず考えられない。オペレータも何も変わったことは
無かったと言う。一応予備品と交換し様子をみた。
そうしたら夜勤のオペレータが足元が寒いので家から電気ストーブを
持ってきて操作盤の保守用コンセントにつないでいることがわかった。
トランス保護のブレーカが飛ぶぎりぎりの電流だったので生焼け状態に
なったのだった。ブレーカを最小限の容量に交換し保全担当者以外使用禁止
の表示をした。
例:ボルト締め付け装置で不良品がたくさん出始めた。
製品のネジ山がだれてしまう。監督者は以前と比べ作業方法は特に変わって
いないと言う。しかし機械としてはどう調べても異常が無かった。
どうしても納得できないので作業状況を観察したらボルトを製品に挿入
するとき数回ねじ込まなければならないのを作業者が手抜きし軽くボルト
をネジ穴の上に置いただけで済ましていることがわかった
例:なぜかNC装置で寸法が時々狂い不良がでる。ダイヤルゲージで動きを
ずっとモニターしたが異常は無い。機械が正常なら補正データを操作しない
限り寸法は変わらないはずだ。現場の監督者は自分以外補正データの変更
はできないはずだと言う。しかしじっくり作業者を観察したら見よう見まねで
覚えた方法で補正データを変更していた。
現場の作業者の発言は原因追求に貴重なヒントを供給する。しかし自分のミスを
言わないことも多いから常に疑いを持って接することだ。
GRの誤作動
接地継電器GRの誤作動はたいていの電力担当者は経験するのではないか。
実際誤作動による停電の方が本当の事故停電より多いものだ。
事例:もらい停電
これは自分の事業所でなく他の事業所や電力会社配電線での地落事故により
本来なら働かないはずの自社構内のGRが作動し停電する現象で良く知られている。
一般にGRの動作感度が200mAで構内の高圧ケーブルの更長がおよそ100m
を超えるとこれが発生しだす。理論的にもわかりやすく他場所での地落電流が
構内のケーブルの静電容量を通して帰還するときの電流を自社の受電所のGRが拾うからだ。
一般に電力会社の配電変電所は1台の変圧器から数回路に分岐しているから自分の
事業所への配電線上の地落事故で停電するのは避けられないが他の系列の配電線の
事故ですなわち元電源は停電していないのに自分の事業所のGRが作動し停電する
のは迷惑なことである。
対策は地落の検出要素を零相電流だけでなく零相電圧との位相差を判断してやれば
構内の事故か構外の事故か判別できる。つまり方向地落継電器DGRの使用で解決する。
古い話だが30年近く以前、工場増築と共にGRの動作が増えた。構内の絶縁は異常無い。
電力会社に問いあわすと別系統で地落事故はあったけど貴社向けの幹線とは違うと言う。
しかしあまりに頻発するのでじっくり考えるとケーブルの静電容量に関係ありそうな
気がしてきた。当時方向地落継電器はあったがZPTで零相電圧を検出する誘導式で
非接地電路である高圧配電線では需要家がZPTを対地間に設置すると地落故障の探査が
できなくなり許可されていなかった。だからこれは特別高圧受電の場合にしか使えなかった。
やがて全国で同種の現象が頻発してきてZPTでなく静電容量素子で零相電圧を検出する
方向地落継電器が開発された。これには微弱な零相電圧を増幅し波形整形や位相比較を
行う半導体回路の進歩が貢献した。
結局当時まだ開発されたばかりの静電容量零相電圧検出式の方向地落継電器を採用し
解決したが柱上開閉器で方向地落継電器が使えるまでには更に5年近く待たねばならなかった。
事例:電波障害停電
主に大型トラックで使用される高出力無線機による電波で柱上開閉器からGR
までのケーブルに高周波電圧が誘起されGRを誤作動させる。
当初は原因が分からずミステリー停電といわれたが特定の定期運送大型トラックが
接近した場合とか道路沿いに限定して発生するところから次第に明らかになった。
本来の市民バンド無線機は0.5W出力までしか認められていないのだが輸入品や
違法改造アマ無線機にさらに高出力増幅器を追加し数百Wから1KW以上の出力を
出すことで遠距離通信を行いだしたところから深刻化した。
発生源はすぐ移動し責任者所在も明確でなくGR側で対策するしかない。
ただし電波の周波数は特定しており商用周波からはるかに高いから対策は容易である。
開閉器GR間のケーブルをシールドし対策品(フィルタ付)のGRに交換すればよい。
事例:接続ミス、保守不良事例
屋外のGR箱はアリや蜂の巣になりやすい。少しでも隙間があると浸入し端子台や
内部基盤が巣となる。これによる誤作動もある。
対策は隙間を完全にコーキング剤でシールしておくこと。
端子接続で電源と内部の制御線端子が接近していると端子台の絶縁不良で誤作動
する場合がある。電源の接地側電圧側を指定通りに接続することだ。
事例:GRの不良
方向地落継電器で急にもらい事故停電が頻繁になった。
模擬零相電圧を入れた試験をしたら異常な動作をした。
新品に交換しメーカで原因分析をさせたら基盤の零相電圧分圧抵抗が1個ダメに
なっていて零相電圧位相のベクトルが大きく狂っていた。
一般に夏期の高温環境で使われる屋外接地GRは内部部品が傷みやすい。
珍現象が出るときは疑う必要がある。
事例:雷サージその他
雷サージその他開閉サージで誤作動する事もある。
本来は時限要素で誤作動を防いでいるが部品劣化で機能しなくなったケースもある。
また方向地落継電器をつかっていても大規模な地落事故だともらい事故停電の
場合もありうる。
子孫まで持ち越すかPCB問題
ポリ塩化ビフェニールPCBが社会的に問題になり生産が終了したのはもう
25年以上前になるだろう。
PCBなんて知らない世代が圧倒的に多くなってきた。それに我々中高年の世代でも
職務で関係していた人を除けば覚えている人は少ないだろう。
PCBは化学的に極めて安定した組成を持った人工合成物で自然界には無い。
通常はどろっとした液状で電気的特性に優れていて不燃性なのでオイルコンデンサ
の絶縁油として多量に使われた。これにより電力用コンデンサは小型化し火災の心配が
無く電力機器の中でも最も信頼性の高い機器となった。
その優れた性質から熱媒体や塗料やノンカーボン複写紙にも使用された。
ところがこれを熱媒体に使用していたライスオイルの製造工場で熱交換器のパイプに穴が
開いていて製品つまり米ぬか油にPCBが混入した。
その結果、そのライスオイルを摂取した人たちの体内の脂肪にPCBが蓄積し多くの
油症患者を発生させその毒性と容易に分解無毒化しない性質が社会的に問題となった。
PCB製造メーカも生産中止し新規に使われる事は無くなった。
ところが既に電力コンデンサには多量に使われておりこの処置に困った。
特殊な専用炉で加熱分解するしかないのだが加熱するとダイオキシンを発生するので
引き受け先は無かった。
そこで関係省庁は当面該当機器にPCB使用の表示をさせ移動廃棄を禁止した。
しかし何年経ってもPCBを分解処理する引き受け先は無く移転や廃業する
事業所のコンデンサは誰知ることなく産業廃棄物として処分されPCBは自然界に
拡散していった。現在では既に当初の半数近くのコンデンサが廃棄されたとも言われる。
現在では加熱しない無毒化処理方法は実用化したが全国に散らばったコンデンサ等製品の
状態での回収と処理は現実には費用と手間の点で難題である。
私の予想では今後も処分の引き受け先はなく時間の経過とともに少しずつ自然界に
排出されていく可能性が強い。これがどのような健康障害につながるかは未知である。
もう現在では通電状態になっているコンデンサは少ないだろうから速やかに関係省庁が
回収指示し原子力発電の廃棄物と同様に官庁の管理下で保管するしか無いのではないか。
別に体内に取り込まない限り危険性はなく放射性物質やフロンガスよりは扱い易い。
問題は世代交代する時期にかかった全国の膨大な数の事業所での個別保管は限界だと言う事だ。
しかし電力界では今のところ最も優れた絶縁冷却媒体として使われているSF6も
このまま使用量が増えると何年か先PCBやフロンと同様にならないだろうか。
化学的に安定な事は裏を返せば自然界で容易に分解無害化しないことを意味するのだ。
SOG操作電源は何処から供給するか?
以下の内容は各地域の電力会社により実態が異なる場合がある。
SOG(高圧過電流ロック形負荷開閉器)は高圧需要家の責任分界点に需要家の
費用及び管理責任で設置され構内事故を外部に波及させないで遮断する機能を
持たせた開閉器である。
構内での地落事故では速やかに自動遮断し短絡事故はそれを記憶して電力会社
の配電変電所の保護装置での遮断を待ち停電と共に自動解放する。
これは構内での事故を保護するべき主遮断器が実際には責任分界点より負荷側に
設置されるためその間が無保護区間となることを防ぐ目的がある。
柱上の開閉器で短絡事故電流など遮断できないから電力会社の遮断器で代用させ
その再閉路を成功させることで永続的な波及事故を防ぐと言うわけだ。
その意味では単に当該需要家の設備保護だけでなく公共性のある保護機器だ。
ところがこのSOGなるもの操作電源が無いと当然機能せず意味を成さない。
操作電源を喪失したSOGは単なる手動のみの開閉器と化す。
では何処からこの電源を供給しているのか。多くは主遮断器より以降の変圧器
の2次側の100ボルトラインだろう。だから需要家の主遮断器手前での
地落事故で突如停電したとき原因調査で主遮断器を開放していたらSOGに電源は
供給されない。その場合にSOGを主遮断器より先に投入したら当然電力会社側
からの停電となり今度は再閉路の失敗が継続する。
これを防ぐには絶対に主遮断器を入れてからでなければSOGの投入をしては
ならない。だからこのようなマニュアルがいるわけだ。
<責任分界点の開閉器を再投入する前に主遮断器を投入しておくこと>
しかしこんなことがめったに無い構内事故停電という不慣れな状況下で100%
できるだろうか。理屈を熟知した担当者でさえ時には手順を間違うだろう。
ハード面での対策は
1.SOGの操作電源を主遮断器の一次側に設置した計器用変圧器より供給する。
2.SOGに操作電源内蔵型を採用する。
3.SOGの操作電源は需要家が供給せず電力会社側の低圧ラインより供給する。
当面できる現実的な対応は1のやり方、計器用変圧器よりの供給だろう。
SOGの必要電源容量は実測では50VA程度で計器用変圧器にそれ以上の余裕が
あれば過電流保護ブレーカ等を通してSOGに供給したら良い。
こうしておけば主遮断器を切ったままでSOGを投入しても構内事故が継続して
いたら直ちに自動遮断するから波及事故という最悪の事態は避けられる。
但しこの方法AOG等トリップに必要な電流が大きい場合は使えない。
しかし本来は2の操作電源内蔵型SOGによるのが最良だろう。つまり低圧の
漏電保護遮断器と同様の仕様だ。もちろんその本体内蔵の操作用変圧器は
経年劣化の少ない完全な信頼性が要求される。
私は本来このSOGの機能は波及の防止と言う公共的な目的を持つものだから
電力会社もその責務の一端を持つ必要があると思う。その意味で3の方法
電力会社の低圧ライン(同一高圧系統に限る)から供給するか需要家の
MOF(取引計器用変成器箱、電力会社の所有)に専用変圧器を内蔵させSOGの
操作電源を供給するのが望ましいと考える。
本来なら責任分界点は需要家の主遮断器の一次側端子とすべきだがそれでは
電力会社側が需要家の構内の点検までやらなければならず物理的に困難だから
SOG機能の開閉器があるわけだ。
だから波及事故の防止用には各需要家の責任分界点に電力会社が操作電源内蔵形の
SOGを設置するのが本来の姿であり需要家は設備点検用の手動の負荷開閉器を
必要に応じ設置するだけで良いはずなのだ。
SOGが電力会社の薦めで設置されだしてもう30年も経つのにこの問題が一部で
しか論議されず進展しないのはなぜだろう。
基盤の水洗い
機械加工工場では基盤の汚れが激しくそれが原因で故障を招く。
だから汚れた基盤は専用の即揮発性のスプレーで洗浄するのが普通だ。
しかし油はきれいに落とせてもネチリとした汚れはなかなか落ちないものだ。
これはどんな基盤でも適用できるわけではないが水で洗うのも良い方法だ。
水道の蛇口のところでブラシで軽くこすりながら流水で一気に洗い流すのだ。
不思議とよく汚れが落ちる。
もちろん後はドライヤー等で完全に乾燥させる必要がある。
工場内ですざましく汚れた換気扇などもホースで水をかけながら洗うと
意外と灯油等で洗うよりきれいになることがある。
これは機械加工に使われる水溶性切削油のミストとダストによる汚れなので
油性の溶剤より水の方が汚れを溶かし易いからだ。
高調波
昨今高調波問題が盛んに言われる。昔からのモーターや電灯負荷では問題に
ならなかったがインバータ等が多量に使われだしてから騒がれだした。
高調波とは何か数式を使わないで説明してみよう。
発電所で作られた電気はサイン波と呼ばれる純粋な交流で高調波の混じらない
きれいな波形をしている。高調波の混じった波形は実に様々の歪んだ波形となる。
サイン波をそのまま抵抗等の負荷に流すのなら電流波形は歪まない。
電流波形が歪まなければ電圧波形も比例して電圧降下するだけでサイン波の
ままである。
問題は昨今の負荷がスイッチング方式になって波形を切り刻んだ使い方を
しだしたことだ。スイッチングとは極めて高速に入り切りをして結果として
エネルギーの量を制御しているやり方だ。
サイン波形を切り刻んだ使い方をすることで電源の電圧降下も激しく変化し
電圧波形も切り刻んだような形となる。このような電圧波形のことを高調波を
含んだ電圧と呼ぶ。
このような高調波を含んだ電圧が力率改善コンデンサ等に供給されると高調波は
コンデンサに流れやすいからコンデンサやそのリアクトルを異常加熱させたりする。
ところでなぜスイッチング方式が増えたのか。それはロスが少なくエネルギー
の制御ができるからだ。以前は電気の制御はトランスで電圧を可変するか抵抗を入れて
流れを制限するしかなかった。
しかし半導体素子の発達で高速で入り切りすることが可能となりなめらかにまた
無駄に熱で捨てることなく制御できるようになった。
それが小規模に行われているうちは問題無かったが大容量の負荷までスイッチング
されだして高調波問題が起こってきたわけだ。
たけやぶやけた
災害は工場内ばかりとは限らない。春になり構内のグランドで野球部が
練習する季節になった。そこで先ず草刈りからと整備にかかった彼ら
集めた枯れ草に火を付けた。そこへ吹いた強い風でたちまち広がった火の勢い
近くの竹薮に燃え移った。あわてて工場に駆け込んだ彼ら消防に連絡するとともに
消火器を持って300m近くを走った。火事場の馬鹿力とはこの事だ。
しかし手の付けようが無く工場の建屋周囲の屋外消火栓からホースを延ばすことに
なった。何個所かの消火栓ボックスからホースをかき集め延々と引っ張った。
サイズの合わない屋内消火栓のホースを持ってきたり慌てているのでオス、
メスが逆に気づきホースを持って方向転換したり先にバルブを開けたので水が
吹き出ているホースに延長ホースをつないだり大混乱だった。
それでも放水により火勢が収まったころ消防も到着し鎮火した。
しかしあわてていたので消火栓起動ポンプのボタンは誰も押さなかった。
幸い当工場は消火栓ラインには逆止弁を通して工業用水とつないであるので
低圧ながらそれなりに放水できた。しかしもしボタンを押していたら高圧で
水が吹き出るホースの延長接続などできっこなかっただろう。
一度に使われた多量のホースの水抜き乾燥は一仕事だった。
グランドにも消火栓が必要だなんて意見もあったが法的義務も無いし無駄な投資だ
から止めた。
火災の予防
30年近く前になるが塗装設備の火災を体験した事がある。
実際塗装設備というのはよく火災を起こすものだ。古くからの塗装工場で火災を経験
していないメーカはないだろう。
火元は静電塗装のスパークとか換気ブロアーの加熱とか工事業者の熔切断の火の
場合が多い。いったん火が付くと実に良く燃えダクトに火が入ると消すことができない。
猛烈な煙だから燃えている場所もわからないし近寄ることもできなくなる。
今でこそ自動消火装置など完備してはいるがいったん燃え出せばそれなりに大きな
ダメージをうけるだろう。出火してからは遅いのだ。火災で一番ダメージを受けるのは
電気設備で配線ケーブルなど全て被覆が熔け無残にぶるさがった姿は今でも思い出す。
私は火気を使う作業では必ず消火器以外に水バケツか水の常に出せるホースを用意
している。これは消火器は小さな火のうちは使いづらいし使えば掃除や届けも含め
後始末が面倒だからだ。実際、水バケツで小さい火を消したケースも多い。
酸素切断なんか現場でやれば落ちた火の粉があちらこちらに飛びはね各所で燃え出すの
は当然だから。それと作業終了後最低30分は残り火の監視が必要だ。
現場にはぼろ切れや紙スポンジなど燃えやすい物がいっぱいあるものだ。
火災報知器の誤報
火災報知器の誤報は多く体験してきた。大きく分けると次の原因による。
1.感知器及び配線以外の原因
(1)暖房器具による誤報
(2)熱発生設備による誤報
(3)扉開閉等の急速な温度変化による誤報
2.感知器及び配線が原因
(1)老朽感知器による場合
(2)配線の不適切による場合
(3)感知器の選定不良
事例1:寒い冬の朝、誤報が出た。原因は暖房機を一斉に運転した
ことで急速な温度上昇が天井の感知器に届いたため。
事例2:突然油圧のホースが破れて天井の感知器に温かい油がかかった。
そのため誤報が出た。
事例3:冷房中に大きな扉を開けたら熱気が一斉に入って感知器が作動した。
事例4:昨今よく感知器が誤報する。感知器はもう20年近く使ってきたもの。
新品に交換したらよくなった。検出部のダイヤフラムのリーク穴に詰めて
あるファイバーに空気中の油煙が付着してエアーが逃げず緩慢な温度上昇
でも作動したと判明した。
事例5:雨が降ると誤報が出る。天井に上がって調べたら雨漏りの水が配線の
ジョイントボックスに溜まっていた。同様に雨漏れが感知器の端子台に
落ち誤報になったこともあった。
事例6:アルミ溶解保持炉の上の感知器が誤報する。
こんなときは差動式でなく定温式でないと使えない。
天井の温度を実測し110度の定温式を取り付けた。
事例7:監視電流が異常に多いので調べたら感知器の端子台に金属製のチリが
積もって絶縁不良になっていた。
事例8:突然火災報知器が鳴り響いた。調べたらフォークリフトが報知器の
柱にぶつかり手動報知器をぶっ壊していた。
幸い工場内部では煙感知器は使わない(ヒュームが多く使えない)のでこれによる
誤報は無かった。それでも空気管式も含めて差動式火災感知器の誤報は多かった。
全くこれではオオカミ少年になりかねない。30年間で実際に火災を検知して災害
を未然に防いだことは無かった。まあ火災報知器と言うのはこんなものだろうけど。
私は自動火災報知器のような誤報の多い物よりスプリンクラーの方がずっと確実だと
思う。もっとも何かぶつけてこわした場合水が吹き出して別の意味で厄介だとは
言えるが。
当地オハイオではスプリンクラが主体で事務所も含め全ての場所に付けられている。
いわゆる差動式火災感知器は見当たらない。確かに差動式は火災をいち早く感知し
知らせる機能にはすぐれているが誤報が避けられず弊害も多い。
日本もいつまでも誤報が多い上、報知のみの火災感知器でなくスプリンクラを新築
建物には採用するべきだ。水源も専用ポンプでなく公共水道で良いように法改正
すればよい。その方がはるかに信頼性も高いし毎年の法定点検も不要にすれば良い。
ハチ退治
野外設備に蜂が巣を作るとやっかいである。
工事中の作業員が蜂に刺され引き揚げたこともある。
例:スズメバチが巣をつくった。あれは危険な蜂だ。
本来なら防護服に身を固め撤去すべきだが何処にでもあるものでないから
蜂の寝静まった深夜に吹き出し花火を点火し入り口の穴から突っ込んだ。
あの巣は出入り口はひとつだけだから完璧な方法だ。
例:アシナガバチが巣をつくった。あの巣は穴だらけだからやっかいだ。
風向きを見ながら殺虫スプレーを巣に向かって吹きながら接近した。
面白いほど蜂がバタバタ落ちる。すぐに完全に死ぬわけでは無いが
攻撃してくる元気は一気に失うようだ。
たかが蜂とあなどれない。毎年何十人もショック死しているそうだから。
山歩きしていても蜂はマムシより恐い存在だ。
恐るべき飴
最近、油圧バルブのトラブルが多い。スプールが動かない。分解して
みると黒いタール状のまるで水飴みたいに粘る異物が付いている。
ベーンポンプの羽根もしばらく止めると広がらなくなっている。
吸込みストレーナはべっとりとそんな飴が付いていて灯油で洗っても落ちない。
唯一洗い溶かせるのは洗浄用シンナーだけだ。
何が原因か徹底的な調査を開始した。やはり油圧作動油に異物、特に水溶性
切削油が混入しているしか考えられない。でもなぜ?
こんな時は刑事と同じく現場百遍だ。作動油と切削油の原液のドラム缶に
それぞれ付属しているはずの手回しポンプがひとつしかない。おかしい。
聞き込み調査をするとわかったことはポンプを誰かが持っていって無くなった
けど経費削減で、また買ってくれと言いづらいので作動油用と切削油用を共用
していた。
全くとんでもない経費削減をしてくれたものだ。被った損害で手回しポンプ
なんか数10台買えるぞ。
作動油中にスラッジが発生する事象は油中へ異物特に水溶性切削油が混入すると
起りやすく油圧機器に重大な支障をきたす。これを防ぐには作動油にスラッジ
の発生しにくいタイプを使用するとかするがそれ以前に作動油の補充で基本的
なことが守られているかが重要である。
ドジ保全
普通関西ではアホ保全と呼ぶがバカ保全と言うと怒る人でもアホ保全なら
笑って済ます。
例1.シーケンサのCPUユニットを交換した某氏。何を勘違いしたか
100Vの端子に200Vを通電した。一瞬にして電源基盤が昇天。
例2.モータープーリーを交換しようとしたらできてきたプーリーの内径が
小さくてなかなかはめられない。これでもかと大きなハンマーで叩いたら
モーターのシャフトがひん曲がった。
例3.ポンプのベアリングを交換しょうとしたがインペラが固く外せない。
叩いていたら鋳物のインペラが割れてすべておしゃかになった。
例4.カッコよく機械の中にインバータを設置したが2ー3日使っただけで
破損。調べたら近くにある切削油のホースが外れインバータが水浸し。
例5.ジグの溶接が外れたので現地で溶接した。ところがその後動作しない。
何と制御配線のフレキシブルチューブに溶接電流が流れてヒート。
中のビニル絶縁電線が溶けて団子になっていた。
このケースはよくあり制御配線と同一配管内に布設したアース線がヒートして
同様のトラブルとなることもある。現地溶接には細心の注意が必要だ。
例6.塩化ビニル配管の接続をした。あせっていたのか充分な養生期間をとらず
通水した。そうしたら接続部から突然すっぽり。工場内は水浸し。
塩化ビニル配管の接続後はジョイント部に抜け止めの仮サポートをしておくのが安全だ。
例7.75kwもあるモータの起動盤を完全オーバーホールしたときのこと。
操作トランスが小さすぎて電圧降下を起こしデルタマグネットが時折保持しな
かった。そのため頻繁にスター状態を繰り返しモータが焼損した。
運転後よく観察すれば気が付いたはずなのに。
まあこの手の話しは限りなくあるものです。
アホ業者
業者に依頼した工事はしばしば監督が充分でないと後で問題を起こす。
当然ながら見積もりの安い業者ほど工事の質も悪い。
例1.野外の水銀灯投光器を取付させた。スイッチを入れたが点灯しない。
見たらあっと驚いた。安定器が付いていない。直接ランプに加電したから
ひとたまりも無くランプは昇天していた。
例2.CVケーブルを端子に接続したが電気が来ない。こんな筈はと調べたら
導体と被覆の間に巻いてある透明フィルムをはぎとらずそのまま残してつない
であった。あわてて、その人のやった全ての端子を見直した。
例3.スターデルタースタート方式のモータのベアリングを交換しようとした
業者。その日だけに雇われたアルバイト君、止まっているから無通電だと思い
込みブラケットを外したらバチィ、巻線が破損した。たくさん巻いてあるから
2ー3本位切れてても良いだろうととんでもないことを考えそのまま組み込んだ。
こんないいかげんな監督の業者もたまにはあるのだ。
例4.水道配管を天井吊りにした業者、しばらくしたら吊りボルトの何本かが
外れた。ナットがダブルロックにしてなかったのだ。常にテンションがかかっ
ているから緩まないと思ったとか。冗談じゃないよ全く。当然全部やり直させた。
配電線地落事故
停電事故は構内が原因よりも電力会社側が原因の方がはるかに多い。
これは配電線の更長の方が構内線より長いから当然ではあるが。
事故原因も大半が地落である。
それでも昨今は停電は激減している。それは裸線から絶縁電線への切替えと
ガイシ部の保護が行き届き樹木や鳥獣の接触地落事故が減ったこと。
避雷器、架空地線等、雷対策が進んだことによる。
古い話だが32年以前に電力配電の歴史に残る事故があった。
ある田舎の集落を雷が襲った直後、周辺の家屋の100V回路に6600Vが
入り込んだ。テレビや電灯から一斉に火を吹き出しあわてて安全器つまり今で
言うブレーカを切ろうとした人が感電死し何軒かの民家が焼けた。
本来高圧配電線は非接地だからトランスの低圧側片側はB種接地されていて
もしトランスが破壊し高圧低圧が混蝕しても対地電圧は150V以上にはならない
はずである。ところがこの時は他所で地落事故がでていて既に高圧配電線路は
一線接地状態となっていたらしい。これではトランスが混蝕したら場合により
低圧側の対地電圧は高圧になりうる。全く運が悪かったとしか言いようが無い。
それに配電変電所の地落継電器は作動しないようになっていた。出荷時点用の
ロックがしてあったとかある条件では不動作になる設定だったとか言われている。
あるいは当時の田舎の配電線だからしょっちゅう樹木に裸線があたって余り頻繁に
地落が働くのでわざとロックしてあったのかも。いずれにせよ今日では考えられないことだが。
最も事故の後の電力会社の対応は葬儀から住居の立て替えに至るまで素朴な田舎
の人々を感激させるほど行き届いたものだったそうである。
しかしこの事故からわかるように線路の安全上地落事故はすみやかに送電を停止
しないと極めて危険である。地落継電器の責務はそれほどに重いのだ。
簡易インバータ
60ヘルツ地域で設備の試運転等でどうしても50ヘルツがほしいとき
どうするだろう。
確かにサイクルコンバータなるものは存在するが何処にでもあるものではない。
汎用インバータを使えば自由な周波数ができるが何10KWと言うような
あまり大きな容量になるとこれまた何処にでもあるものではない。
こんな時、重宝なのがエンジン発電機の活用だ。これならたいていの街の
レンタル店に置いてあり100KW程度までなら簡単に借りれる。
後はエンジンのスロットル調整で50または60ヘルツにもっていけばよい。
本来は工事現場の仮設の電力供給用に使われるものだが利用しない手はない。
例:関東地区から持ち込んだ研削機を60ヘルツで試運転したら回転が
早すぎ使えない。ギヤーを交換するのは時間がかかる。
モータの極数を変えるのも取付上容易ではない。
そこでギヤの交換が準備できるまでエンジン発電機をレンタルし50ヘルツ
を発生させて運転を続けた。
変圧器のタップ
高圧から低圧への変圧器のタップの設定を変更する作業は緊張する。
スパナを絶縁油の中に落とさないようにひもを結び作業服のポケットから
ペンや手帳が変圧器の中に落下しないよう全部出す。そして狭い窓から油中に
手を入れ締めすぎてネジをダメにしないよう慎重にしかも緩まないように。
もしも異物が変圧器の中に落ち込んだらコイルの間にかみこみ重大事故に
つながるからだ。万一何か落としたらどんなに面倒でも鉄心を吊り上げ
異物を除去しなくてはならない。
本来はジョイントバーから締め付けナットは外れないようになっているはずが
バーの加工が悪くて締め付けナットが突然外れタップの端子台に落っこち肝を冷やした
こともある。
それと点検業者の中にはタップの増し締めをする場合もあるがもしあの細いボルトに
クラックでも入ったらと思うと不安である。とても他人まかせにできない場所だ。
大体タップ端子台の構造はチャチである。あんなもの無い方が安心だ。
納期はかかるが一次側電圧は普通決まっているのだから6600Vのタップ無し仕様で
発注するのも方法である。電力会社の送り出し電圧も完全ではないがそれなりに
安定するよう自動調整しているからだ。
それに需要家が上記のタップで頻繁に電圧調整などしたらそれこそ事故の元だ。
最初の受入時だけ必ずチェックをし後はむやみにいじらないのが良いと思う。
力率とは
トランスの容量選定に力率は無視できない。
同様に負荷が増えトランスが容量不足になってきたときも、もし力率が
低いのなら低圧回路にコンデンサを設置するだけでトランスの増強が
不要になることもある。
単に電流のモニターだけでなく力率のモニターも時々は必要である。
体験例:500KVAのトランスを設置したキュービクルがあった。
負荷が増えトランスの温度も80度近くに上がってきた。
トランスの増強を考えたが通常負荷での力率を計ると50%しかなかった。
そこで低圧側に合計200KVAのコンデンサーを入れたらトランスの温度は
60度以下に下がった。
コンデンサは遅れ無効電流を発電し供給する発電機だと考えると良い。
最もこの発電機は電源が供給されていないと発電しないが。
ところで数式を使わないで力率とは何か解説せよと素人から聞かれたらどう答えるか。
実際電気屋でも力率を数式によらずに理解している人は少ないのではないか。
昔、某工業高校の先生は力率とはcosθだと覚えるしか仕方が無いと言っていた。
力率は交流回路でコンデンサまたはコイルが存在するから発生する。
これらは共にエネルギーを貯める素子だ。コンデンサは静電エネルギーを
コイルは磁気エネルギーを貯める。
特にコイルはモータを使えば必ず必要だからほとんどの負荷に存在する。
だから回路にこれらがあるところに電気を送るとその瞬間エネルギーを貯める。
問題は交流を送り続けるとその極性の変わるたびにエネルギーの極性も変わる
ことだ。コンデンサだとその蓄電している極性、コイルだとその磁極の方向が
激しく変化する。このエネルギーの極性変更をするため電流が発電機からコイル
やコンデンサの間に流れ続ける。
発電機は発電所にあるから途中の送電線や変電所を通して長大な距離を電流が
流れることになる。
ところがエネルギーは単にコンデンサやコイルの中で極性の変化として移動して
いるだけだから熱になって消費されるわけでは無い。
厳密にはわずかは熱になるがそれは別の現象でありここではふれない。
エネルギーが消費されないけど電流は流れる。この電流に電圧を掛けたのが
無効電力と呼ばれる。
電力会社から見れば無効電力は料金は取れないのに電流が流れる以上、変圧器
等の設備容量は必要だからありがたくない。
これに対して抵抗負荷はそのまま熱としてエネルギー変換され貯まることはない。
この抵抗負荷に流れる電流に電圧を掛けたのが有効電力である。
つまり交流回路では電圧と電流を掛けた電力には無効電力と有効電力が含まれる。
この電圧と電流を掛けた電力(皮相電力)と有効電力の比率が力率だ。
力率が100%とは電力会社からみて全て熱になる抵抗負荷だけのことで、
力率が80%とは送った皮相電力のうち80%しか熱として消費されないことだ。
残りの20%はむなしくコイルやコンデンサに行き来している電流の分だ。
だから電力会社は無効電力からも料金を取ろうとする。
それを無くすため需要家は力率改善のコンデンサを設置しコイル分の内部で
行き来しているエネルギーは自前で供給する。コンデンサはコイルの無効電力
を発電する発電機と言うわけだ。逆に言えばコイルはコンデンサの無効電力の
発電機でもある。これらはお互い元の交流電源が与えられる限り相互にエネルギー
のやり取りを続ける。
これはコイルがエネルギーを出すのはコンデンサが蓄電する時でコンデンサが
エネルギーを排出するのはコイルがエネルギーを貯めこむ時だからだ。
それにしてもこんなうまいことになっている電気って不思議ですね。
無効電力なんてまるでムダ電力みたいな名前で誤解を与えやすい。
変電室に来た社長が無効電力計がぐるぐる回っているのを見て電気のムダが
多いから節電せよと言った笑い話がある。まあ無効電力は少ない方が良いのは当然だけど。
日米漏電考
電気は眼にみえないから初心者への入門書では水の流れで説明してある。
確かに電流は水流、電圧は水圧と似てはいるが大きな違いは電気は必ず
発電側に戻らなければエネルギーとして利用できない事だろう。
一方通行の送りっぱなしでは無いのだ。これが水道やガスと根本的に違う。
じつはこの性質は漏れの検出には極めて都合がよい。2本線の場合双方とも
電流は同じでありもし差があればそれは漏電を意味する。
これは3本線でも同様で電流の方向と大きさを考慮すれば必ず送った分は
戻っている。
だから2本または3本の電線を鉄心で囲むとここに誘起する磁気は打ち消し
あって通常は発生しない。しかし漏電が起こるとその差分の磁気を生じる。
アメリカでは漏電ブレーカにまずお目にかかれない。それどころか普通のブレー
カでさえ日本ほどには使われずもっぱらごつい開閉器とヒューズである。
ヒューズに関してはこれでもかと多量に使い制御盤の大きなスペースを埋めて
いる。もちろんこれはこれで末端の負荷保護ができて結構なのだが小型化とは
逆行する。
なぜ漏電ブレーカが使われないかは漏電の考え方によるのだろう。
完全にアース線工事が施工されていれば絶縁破壊したらヒューズが切れて危険はない。
わざわざ信頼性に不安がある漏電ブレーカより確実だ。
ここで言うアースは日本でよくやる地面にアース棒を打ち込むのでなく完全に
アースラインにつなぐやり方である。だから接地抵抗を意識することは無用だ。
コンセント(レセプタクル)は全てアース極付きだから家庭用電化器具で
漏電した場合でも器具の対地電位は上がらずヒューズが飛ぶまで漏電が進行するだけだ。
漏電ブレーカは25〜30年前ヨーロッパの製品を日本のメーカが導入し
湿気の多い日本の国情に合っていたこともあって家庭の配電盤にまで急速に
普及した。日本では従来配線にアース線を併設しないで末端でアースを設置
することが多くどうしてもいいかげんな接地抵抗のアースになりがちだった。
実際絶縁破壊しても過電流でヒューズが飛ぶことは希であった。
そのために漏電火災に進行することも多かったと考えられる。
漏電ブレーカはその意味で日本では漏電火災の防止に貢献しただろう。
しかし漏電ブレーカの普及はアース配線の完全化をを防げてきたのではないだろうか。
家庭用でも昨今アース極付きコンセントが一般化してきたが大半の器具は2本線の
ままだし設置極付きコンセントへ配線するケーブルも緑線(アース線)入りは少なく
工事業者は、有り合わせの赤白黒3色の単相3線式ケーブルを使って配線することが多い。
しばしば赤色線がアースラインに使われまぎらわしいことこの上ない。
それにそのアースラインを何処で信頼できるアース極につなぐのか問題だ。
結局低圧回路でのアース工事軽視の考え方が漏電ブレーカの普及に貢献したと言えるだろう。
入る水と出る水
あらゆる電装機器の防水には神経を使う。
防水パッキンやシリコンシールで一応防水対策はしてあっても内部に水が
溜まってトラブルを起こすことがある。
例1:完全にふたをシリコンシールで密封したジョイントBOXに水が溜まる。
わずかずつ周囲温度の変化等での呼吸作用で浸入した水がなまじっかシールして
あるために底に溜まったままになるとわかった。
そこで底に5ミリ程の穴をあけたらその後は水が溜まらなくなった。
例2:モータの端子接続箱に水が溜まる。ふたは完全にシリコンシールで密封
してある。これもシールが完全なため浸入した水が抜けず溜まるものだった。
ふたの下部はシリコンを塗らずにおき屋根状の水よけカバーを取り付けた。
一般に言えることだが水または水分は密封した中にも呼吸作用で浸入するものだ。
これが自然に抜けて行くなら問題はないがなまじっかシールをすると中に溜まる
ことが多い。出る水より入る水が多いのだ。底を支障無い程度に開放するのは
簡単だが効果がある方法だ。
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